vol.24
「ホンモノ」

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 皆さんお久しぶりです。私は梅雨のアメにもマケズ、夏の暑さにもマケズ、庭を造っています。最近の暑さは、要注意!できるだけお庭の植物の水遣りをしてあげてくださいね。
私も朝夕、お水やりに忙しくしております。特に、今年の6月に植えたばかりの木はまだ、根ばりが未熟なので、たくさんのお水が必要です。
 この木はカフェの中に差し込む西日を防ぐために植えたのですが、今年は葉っぱがまだ茂っていないので、この木が活躍するのは来年ぐらいからですかね。枝ぶりがとても良い木なので気持ちのいい木陰を作ってくれるはずです。この木もわざわざ小山シェフと探しまわった木なんですよ。
 あと、もう既にカフェの前に大きな船形の石の蹲に気が付かれた方もいらっしゃると思いますが、あれはメダカを飼うための蹲です。お庭ができた当初から、 「庭でメダカを飼いたいなぁ」と小山シェフから言われていたので、念願のメダカですね。石の蹲は小山シェフと一緒に京都の西村石灯呂店で探してきました。
西村石灯呂店は京都の北白川にある5代続く石屋さんです。西村さんが作られた作品以外にも、飛鳥時代の礎石や高麗、李朝など朝鮮半島の石造品などのコレクションも多く所有していらっしゃるので、石の美術館のような工房で、今でも職人さんたちが手で石を鑿で削り燈籠や蹲を作っています。初めて訪れた時に出迎えてくれるのは、鑿を槌でたたく甲高い音。手作りならではのリズムで聞こえてくる甲高い石を鑿で削る音は工房全体にいい緊張感をもたらしていました。その音を聞きながら、西村さんに案内してもらいながら工房の裏に流れる白川にかかる橋を渡ると、裏山にもう何百年も前からそこにあったような雰囲気で西村さんの手作りの蹲や燈籠が据えられています。そこは目に見えない結界で区切られたように、工房とは全く違う雰囲気の空間が広がっていて、そこに入った瞬間から、手作りの良さ、という言葉だけでは片付けることができない、圧倒的な西村さんの造詣のセンスと作品の力づよさが迫ってきます。まさに、「京都のホンモノ」、

それはすなわち「日本のホンモノ」。  写真

 小山シェフがカフェの回りの庭作りにあたり私に言い続けていたことは、「京都のホンモノ感」。
シェフが小さい頃、京都の路地裏を駆け回りながら感じていた、「京都のホンモノ感」を小山シェフのお店のお庭にも持たせたい、とよく言われていました。しかし、それはなかなか難しい注文。未熟な私はこの注文を棚上げして、5年、京都のいろいろなお庭に通い、茶道を習い、ようやく見つけることができた一つの「京都のホンモノ」の形が西村さんの石造品でした。
西村さんの工房を訪れたとき、これならシェフに納得していただける、と感じ直ぐにシェフに連絡しました。

そして、後日小山シェフと一緒に西村石灯呂店へ。
小山シェフも西村さんの石造物をみるなり、
「これやねん。これ。これが俺が言ってたことや。」とものすごい集中力で一つづつ丁寧に石を見ては、「生活の中でこんな作品を毎日見れたらセンスが良くなると思わへんか。」と唸っていました。数ある石の作品の中で、小山シェフがもっともお店に合うと感じたのが、今カフェの横に置いてある船形の石の蹲なのです。確かに、「京都のホンモノ感」がありますよね。それもそのはず、西村さんはイサムノグチさんとお仕事されていたり、京都迎賓館やシャネル本社に石造品を納める日本を代表する石の職人さんなのです。

写真 今回は西村さんの船形蹲によって、「京都のホンモノ感」を少しお庭に足すことができましたが、早く自らの力でその「ホンモノ感」を生み出していかなければなりません。ああいういいものを見たらつい自分がニセモノに思えてしかたありません。今回、たくさんの「ホンモノ」を見て、また自分の足らずを見せ付けられて、凹みますが、いい勉強になりました。


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更新日10.8.6


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