パティシエエスコヤマ研修旅行記2016

Vol.10 経済都市ホーチミンでのフリータイム WRITER:笠井 慧

研修旅行4日目ホーチミン午後のフリータイムのレポートを担当させていただきます、小山ロールや“奏”の生地を担当している笠井慧です。よろしくお願いします。
私は入社2年目で、海外に行くのも初めてでしたので、文化の違う所へ行くのがとても不安でした。
ですが、ベトナムの食べ物はどんなものがあるのかとても楽しみにしていました。

この日は午前中のサンフレーバーさんの見学を終え、午後はフリータイムとなりました。ホーチミンはベトナム最大の経済都市。
ホテルから一歩出ただけで、目の前は沢山のバイクや車のエンジン音とクラクションが鳴り響いている、とてもエネルギッシュな街です。
ベトナムの交通手段はスクータータイプのバイクがとても多く、道路には大量のバイクが走っています。歩道を歩いていても、歩道の上まで走るバイクにクラクションを鳴らされるほどでした。

真夏の熱気と騒がしい音の中、マルシェの松田さん、資材担当の西さんと杢田さん、販売の原さんで街に繰り出していきました。
初めにタクシーで「ベンタイン市場」に向かいました。
ベトナムでは、ビナサムタクシーという会社の白と緑のタクシーしか乗りませんでした。違うタクシーの場合メーターが無い場合もあるそうなので注意が必要です。

ベンタイン市場に足を踏み入れた途端に「愛してる!!バカー!!」と叫ばれる販売の原さん。
私は「お兄さん!お兄さん!!」と腕を掴まれ、帽子を取られて強い力で店の中に引きずり込まれそうになりました。
とても活気の溢れる市場のほとんどは女性が働いていて、話によるとニューハーフの方も多いそうです。
入った瞬間から少し怖い思いをしましたが、引き返さずに奥に進んでいきました。偽物のブランド物や、革や木の小物などが所狭しと並んでいて、奥に進んでいくと、ハーブや香辛料、生臭い匂いと共に、食品が多くなっていきました。ドリアンやスイカ、ドラゴンフルーツなどの南国の果物や乾燥したエビや小魚、ハス茶ベトナムのコーヒーなどがありジャコウ猫のコーヒー「コピ・ルアク」もありました。その中でも一際興味をそそられたのがサソリとコブラが入ったお酒です。私はこれを買ってみよう!と思い、店員さんとの値段交渉に入りました。

「400000ドン」とベトナム語で話す女性に日本語とジェスチャーだけで値引き交渉。交渉の結果半額の200000ドンで買うことができました!お金を払う際にも一悶着ありましたが、無事に商品を手に入れることができました。200000ドンは日本円では約1000円です。(ドンから0を二つとって1/2にした金額が日本円の金額です。)

隣では、資材管理の西さんが、奥さんから頼まれたハス茶を必死で交渉をして無事に購入。
店員さんは観光客になるべく高値で売りたいのと、こちらはなるべく安値で買いたいその両方の妥協点が難しかったですが、日本ではなかなかできる経験ではありません。言葉が通じなくても意思疎通は出来るんだと実感することができました。
賑やかな市場を後にし、市場からは徒歩で移動です。
私達は人気老舗カフェチェーン店「フックロン」に向かいました。緑を基調としたロゴは、スターバックスに似ているので、何となく親近感を覚えました。
店内はガラス張りで木目調のお洒落な雰囲気。現地の方々はもちろん、観光客も多くくつろいでいます。スタッフも元気が良く片言の英語で話す私にもしっかり注文を聞いてくれました。私は人気のピーチフローズンティーを注文。値段は49000ドンでした。シャリシャリしたピーチティーの上にゴロゴロと黄桃が入っていてとてもフルーティーです。ベトナムの暑さで火照った身体に冷たい飲み物はいつもより美味しく感じ、すぐ飲みきってしまいました。涼しい店内でゆっくりくつろぎたかったですが、半日なんてすぐに終わってしまいます。店を出て次の場所へと向かいます。

歩いていると、資材管理の杢田さんが「気になる雑貨屋さんが数件ある 」と言うので、行ってみることにしました。

1軒目は「L`USINE」。アオザイやベトナムの家具、食器、時計やサングラスが売っていて、クラシックな雰囲気のお店でした。2日目に見学させていただいたマルゥさんのチョコレートも並んでいました。
2軒目は「Saigon Boutique Handiclaft」というお店に入りました。ここでは沢山の食器が並んでいてココナッツを使ったお皿や貝殻や木のスプーンやフォークなど、可愛い食器が多くとても目移りしました。
私は、両親へのお土産として竹のボウルとココナッツのお皿と貝殻の真っ白な スプーンを購入しました。値段は709000ドンでした。
ベトナム時間で20時頃、少し日が落ちて薄暗くなり始めてきました。
ここで、杢田さんはシェフとのお食事があるということなので別行動になりました。

スーパーがあったのでここでもベトナムのお土産が買えるのではないかと立ち寄りました。スーパーに入る際に警備員に止められました。万引き防止のため、大きな鞄や袋などは鍵付きのロッカーに入れてほぼ手荷物はなしの状態で店に入らないといけない、とのこと。
日本ではそこまでしないのでビックリしました。
内装は日本のスーパーとそこまで大差はありませんでした。日本のメーカーのものや日本でもなじみ深い商品がたくさんありました。ベトナムで見られたことが嬉しく、日本でも買えるのにお菓子や飲み物などたくさん買ってしまいました。他にもベトナムの即席麺やベトナムビールを袋一杯に買い、一旦ホテルに戻りました。
20時半頃もう一度外に出ると、あたりはもう暗くそろそろお腹が減ってきたので、松田さん、西さん、原さんで夕食を食べに行きました。
ガイドブックなどでどこへ行くか調べていると、「前代未聞の人気レストラン」とあったので、そこへ行くことにしました。
タクシーに乗って着いたレストランは「noir」(フランス語で「黒」)です。このお店の特徴を表した店名です。
店に入ると薄暗い照明で、他のお客様が目隠しをして何かをしているのが見えました。
ソファーに案内されドリンクを注文し、飲みながら待っているとスタッフさんが何かのボードと目隠しを持ってこられました。

まず、ボードの枠にはまるブロックの形や位置を数秒見せられ、覚えるように言われます。全員目隠しをしてボードから外されたブロックをはめきったらゲーム終了、と説明されました。これをクリアしないと食事のメニューは頼めません。
少し不安になりながら手探りでブロックの形を確かめボードのくぼみの形も触りながらはめていきます。ですが、ブロックの形も位置も数秒では覚えられておらず、皆で苦戦。
そんな中、マルシェの松田さんはいち早くクリア。
私はまだ9つのうち3つしかはめられていませんでした。少し焦り不安になってきます。
やっと9つクリアして目隠しを外すと、原さんがまだ悪戦苦闘していました。

全員クリアし一息ついたところでようやくメニューを選びます。
メニューは「ウエスタンコース」「イースタンコース」「ベジタリアンコース」があり、点字でもメニューが書かれていました。メニューの詳しい内容は一切書かれていません。私達は「ウエスタンコース」を選びました。飲み物は白ワインを選びました。アレルギーや宗教的に食べられないものはないかを聞かれた後、違う場所へ案内されました。
手荷物、特に携帯や腕時計、光を発するものの持ち込みをしないようにと言われ、全て鍵付きのロッカーにしまいます。
違う建物に着くと、そこからはトゥさんという盲目の女性スタッフに案内が交代されました。
全員肩を一列に掴んでトゥさんに先導されました。全く照明のない螺旋階段を上れば上るほど光が失われていき、上りきると、真っ暗な世界になっていました。何も見えないのですごく怖くて不安になりました。
一列につながっている肩を離したら絶対に帰れなくなると思い、手にも力が入ります。トゥさんは私達を席まで案内して無事に席に付かせてくださいました。「何かあったら“トゥ”と呼んで」とおっしゃって歩いていってしまいました。
部屋の広さ、食事をしているお客さんの人数や距離、どこに何があるのか全くわかりません。視覚を失った私達は聴覚、嗅覚、触覚、味覚で判断するしか術は無く視覚以外の四感に集中します。
皆の位置を声で確かめ合い、近くにいることを知り、少し安心しました。
何かが運ばれてくる音がします。テーブルに何かが置かれると、トゥさんが私の手をワインですよ、グラスですよと触らせながら位置を教えてくださいます。私達は目が見えないと何もできなくなって、まるで動けないのにトゥさんはスムーズに配膳をしていきます。
前菜が運ばれてきて前に置かれる音がしました。4皿の位置と食べる順番を教えていただき、全員で食べ始めました。
何が入っているのか。そもそもどんな料理なのかもわからず、スープが2種類と料理とサラダが1つずつ。順々に食べて、皆と言葉を交わしながら、どんな料理かを考えていきます。
「カリフラワー?」
「バルサミコ酢の味がする」
など言い合い食感、味、匂い、いつも自分達が食べているものと味が似ていないか記憶を頼りに感じていくのがとても楽しいものでした。
次にメインが4種類運ばれてきました。魚料理1種と肉料理が3種じゃないかとみんなで予想しました。
「牛肉と玉ねぎ!」
暗闇で不安でしたが料理を食べて考えるのが全員楽しくなってきました。
デザートは3種類あり西さんに
「製造スタッフ、頑張って!」
と言われました。際立っている味はわかるものの、その味がどんな材料なのかと繋がらないものがあり、普段からの勉強不足を痛感しました。
普段から何かを食べる時に香り、味、特徴をもっと意識して考えながら食べて記憶していれば、この材料はこれだ!と繋がったかもしれません。

トゥさんに食べ終わったことを伝え、また肩を掴み一列になり外に出ます。
外に出ると夜なのに暗闇に慣れてしまったせいか、少しの明かりで目が眩みました。
最初にゲームをしたところに戻り、料理の写真とメニューを見て答え合わせをしていきます。料理の写真を撮ることはできなかったのですが、とても綺麗な盛り付けで見られないのがもったいなく感じました。
ホーチミンへ行かれる機会がありましたら、ぜひ足を運んでみてください。
「noir」を出て、まだお腹が空いていた私たちはドンコイ通りある「Pho 24」というフォー専門チェーン店に行きました。フォーは米粉で作った平たいベトナムの麺料理です。

私は「フォーボー」を頼みました。ボーは牛という意味らしく牛肉のフォーなのでフォーボーというそうです。原さんは「フォーガー」を頼んでいました。ガーは鶏肉という意味です。日本でいう豚骨ラーメンや塩ラーメンのようにスープや具材で呼び方が変わることに少し親近感を覚えました。
スープはとてもあっさりしていておいしかったです。
まだ食べ足りない私たちはバインミー専門店「Bready」に足を運びました。
バインミーはベトナムのサンドイッチでフランスによる植民地の影響でパン食の文化が広がった事で出来た料理です。また、ベトナムのフランスパンには米粉が入っているので軽い食感でした。具材をたくさん選び、お持ち帰りし、歩いて戻ることにしました。途中に噴水がある大きい公園があり現地のカップルが沢山ご飯を食べていました。ベトナムは家で食べるより外食が多いそうです。夜22時を超えても街には人が沢山いてホーチミン市はとても活気がある街だと感じました。

ホテルに戻り、部屋でバインミーをいざ試食です。バインミーには「ヌックマム」という魚醤をかけて食べます。日本での醤油のようなものですが、少し匂いが独特に感じました。

ホーチミン4日目はそこで解散、終了になりました。
今回の研修旅行で初めての海外でしたので文化の違いなど感動することばかりでした。また、普段話さない方々と話をする機会があり、帰国後もコミュニケーションを取れる関係になることができました。
カカオのことを沢山学ぶ機会を作ってくださった小山シェフ、長期休暇を許してくださったお客様ありがとうございました。