es koyama WINTER GIFT MAGAZINE 2021
11/54

SUSUMU KOYAMA’S CHOCOLOGY 2020 /SUSUMU KOYAMA’S CHOCOLOGY 2021 NEW10ALIVE:生きるということ BATON~つながり~2021年のショコラは4人のモノづくり人の支え無しでは創作できなかった。 なかでも代表的なのが、カフェファソンの岡内氏だ。 僕がカカオ産地へ行けない、外食にも行けない、インプットが出来ない状況だったのと同じく、岡内氏も産地へは行けず、豆の入手も困難な状況だったという。 そんななか「どんなアプローチでお役に立てるか」と、氷出しコーヒーの改良版と、1種類のスペシャルティコーヒーでも製法と焙煎温度の異なるもので無数のバリエーションを用意してくださった。 また、最後まで焙煎温度の微調整を提案してくださり、非常に高い精度で作品を追求出来た。 彼はいつも創作のスイッチを押してくれる大切なキーパーソンである。 続いて、お茶のHOJOの北城氏。 お会いしたことは無いにも関わらず、こちらの創作をイメージしながらだろうとしか思えない素晴らしいお茶との出会いを提供してくださった。 3人目は「なら橘プロジェクト」の城(じょう)氏。 とにかくあの熱意には負けられない。 そして、大和橘の本当のポテンシャルを引き出し、「もっとこう表現すべきだったのではないか」を実現できた。 最後が京都のレストランSUSUMU KOYAMA’S CHOCOLOGY 2020ススム コヤマズ チョコロジー 2020SUSUMU KOYAMA’S CHOCOLOGY 2021ススム コヤマズ チョコロジー 20212020年は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に始まり、巨大台風や豪雨災害といった身近に感じる自然の脅威や、世界各地で起こる森林火災、海洋プラスチック問題など、あらゆる事象について今まで以上に“自分事”として考えた年になった。 そんな状況下で始まった2020年の創作。 作品が生まれるにつれ明確になったテーマは、「ALIVE:生きるということ」。 地球上の生物は気候変動や巨大隕石の落下で5度の大量絶滅期を経験し、今、6度目を迎えているといわれる。 ウイルスは身近だが、絶滅期の話は多くの人が「まさか」と思うだろう。 しかし、僕には温暖化や絶滅種の増加がその事実を証明しているようにしか思えない。 それでも我々は、先人が様々な困難に立ち向かい、生きるための知恵を継承してくれたように、より良いかたちで次の世代に経験のバトンを渡さなければならない。 こうした思いが、今回の4つのショコラを生み出した。 No.1は「本能」。 木々から花の姿が消える7月。 蜜蜂が種を残すという純粋な本能に従い7mに達する高木の「からす山椒」の花から必死に集めた蜂蜜を使った。 No.2「知恵」は、薬として利用していた「牛蒡」を初めて食べ箱サイズ:縦10×横10×高さ3.5cm特定原材料28品目:乳成分、りんご、大豆賞味期間:30日(20℃以下)箱サイズ:縦10×横10×高さ3.5cm特定原材料28品目:乳成分、りんご、大豆賞味期間:30日(20℃以下)た先人の知恵に敬意を表して。 No.3「神」は、メキシコで「神の飲み物」と呼ばれる「テハテ」を表現した。 人は自然の猛威に対し無力さを感じた時、神に助けを請う。そういう意味も込めた。 No.4は「RITA」。 「大和橘」は奈良時代、都へ続く道に「旅人の命を守るため実の生る木を植えよ」という官命が下り、その時に街路樹として植えられたとされる。 「人のために」という、利他の精神を体現した果実だ。 これらが表す意味を通じて世の中に、「人類も地球上に生を授かった生物として、一人ひとりが今、やらなければならないことに対して具体的に取り組もう」というメッセージを発信したいと思っている。 僕は次の世代にどんなバトンを渡せるだろうか。cenci(チェンチ)の坂本シェフ。 素晴らしい素材「香茸麹」と出会わせてくれた。 そして本生産用の素材の仕上がりを決めてほしいと、最後の調整を委ねてくれた。元は自分が創り上げた素材だが、ショコラのためにつくったものは、ショコラを創る人に委ねてくれる。 自分の役割をまっとうしている。 良いモノづくりをする人の手本にしたいぐらいだ。 全ての方は初めてのセッションではない。 共に創り上げてきた歴史や関係性がそこにはあり、こういう方々の作品があるからこそ自分も良いモノを生み出せるし、彼らに恥ずかしくないモノづくりをしようと背筋が伸びる。 素材を提供してくださる皆さんから受け取ったバトンを、良い形でお客様に繋いでいく、その使命を今年もまっとうしたい。

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る