es koyama CHOCOTATE BOOK 2022
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3 そして、コロナ禍だからこその出会いや発想によって生まれたアイテムをいくつか含んでいるのが「UNDERGROUND CHOCOLATE AWARD」 。なかでも「コヘンルーダ+マンゴーパッション」は、数少ない外出の機会に訪問した東京下町にある和菓子店のコース料理に使われていた「コヘンルーダ」という個性的な味わいの沖縄産ハーブに出会い、すぐに「マンゴーとパッションの組み合わせとマリアージュさせる」と迷わず決めたことから誕生したショコラ。 外出の機会が少なかったからこそ、「何としても形にする」という意識が強く働いたのだと思う。 実際、コヘンルーダは一時入手困難と言われ一瞬目の前が暗くなったが、庭師松下氏にも協力をしていただき、何とか量を確保することができた。 また、「梶谷農園秋摘みハーブ+苺」は、コロナ禍だからこそ、の典型。 やはり周りの料理人さんも自由に生産者さんの元を訪ねたりすることが出来ない中でどうやって新しい素材を見つけようかといろいろと調べられていて、その中の一人から「ここのハーブティーがすごい」 「UNDERGROUND~」と、「Official Tea Fukaborism」の創作で改めて感じたのは、「自分がやっている創作は、無意識でやっていることが後になって分かることが多い」ということだ。 ショコラ創作において僕は自分の味覚と、味からパッと想像したもの(ペアリングの素材、色、酸味・塩味・甘味などの五味のイメージ)を大事にしている。 つまり、事前に素材のことをあれこれ調べて机の上でアイデアをメモ書きしながら新しいショコラを考えない、ということだ。 初めのインスピレーションを元に、それを具体的に味としてショコラに落とし込んでいく、という流れであるが、商品コピーを作成する段階になったときに、例えばお茶の場合、産地はどんな環境で、味はどういうふうに表現されることが多いか、ということを初めて聞く。すると、偶然にも自分の味覚を頼りにペアリングさせた素材が、業界のなかでもよく合わせられることが多いペアリングだったり、例えられる味だったりするのである。 今回、「UNDERGROUND~」のなかでその典型的と教えていただいて使うことが出来たものだ。 実際本当に素晴らしいハーブティーで、飲んでからすぐに発注し試作に取り掛かり、完成させた。 もう一つ、これはコロナ禍どうこう関係なく、「UNDERGROUND~」の中で必ず伝えておかなければいけないショコラがある。 別のページでも詳しく書いているが、「一眞坊グアテマラコーヒー+アブサン」というショコラだ。 元々はCHOCOLOGY候補であり、テーマが生まれるきっかけとなった。 このコーヒーを提供してくださった「丹波裁ち切り蕎麦 一眞坊」の大将 小川氏から感じた思いや姿勢から「少し立ち止まって、身の回りにある様々なことの本来の意味をもう一度考え直そう」というテーマが浮かび上がり、この出会いがあるまでの間にぼんやりとCHOCOLOGYのテーマにしようと考えていた「人」というキーワードが重なり、さらに先ほど述べた岡内氏や坂本シェフとのやりとりによって「魂のバトン」というテーマが導き出されたのである。なパターンだったのが、「微酸金萱+アーモンドミルク」だ。 元となっている「金萱茶」は、その甘味が特長で味わいを「ミルクの甘味」と表現されることが多い。 そうとは知らず、繰り返し試食をする中で「何か味に締まりがない。 動物性ではなく、植物性のミルクのニュアンスを感じるのでアーモンドミルクの要素を足そう」と判断して実際に足したら味が締まり、非常に出来の良いショコラが完成したのだが、半年ぐらい経って商品コピーを作るときに聞かされたのが、「このお茶は、その味わいをミルクに例えられることがあります」という話だった。 試作の段階で先にそれを聞いていれば迷うことなくそのペアリングで新しいショコラが創作できたのでは?と思われるかもしれないが、ひと口に「ミルク」といってもアーモンドミルクが思い浮かんでいたかは分からないし、「正解はこれです」と決められていてもそこに辿り着ける補償は無いので余計に時間がかかって迷いに迷って結局完成しなかった、ということになっていたかもしれない。~コロナ禍だからこそ生まれたもの~創作のなかで大切な「直感」

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