シェフと庭師Mの庭造り日記

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Vol. 35

テロワールを生かす
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 2日目は朝からリマ市内をランニングしてから会場に出発。

会場に行く途中、チョコレートソムリエの札谷さんが、
「リマで人気のパン屋さんがあるので、寄ってみませんか?」と提案してくださったので、この日は、少し寄り道してパン屋さんを見学。ここでも小山シェフがいると私におこぼれが回ってきます。小山シェフがパン屋さんのオーナシェフと挨拶をすると、次から次へと出来立てのパンを出してくれました。テイスティングの目的で。バゲットもクロワッサンもアボガドを載せた総菜パンもすごくおいしかったし、おしゃれなお店でシェフがすごい男前でした。僕は“美容”と“健康”のため、朝食でチアシードをたらふく食べたにもかかわらず、美味しすぎて、たくさんパンを食べてしまいました。せっかく朝ランニングして、エネルギーを消費したのに、早くも帳消しです。しかし、雰囲気も良く、おしゃれで、とても感じのいいパン屋さんでした。
「ここで撮影したらパンがとてもきれいに撮れるなぁ」と石丸さんがたくさん写真を撮ってくれました。

 さて、あまり時間がないので、急いで会場に向かうと、今日は会場には電気も来ており、PCが使えるようになり、審査をする環境が整ったので、小山シェフは一日中ICAのチョコレートの審査です。
 審査はID番号をふられた小さいプラスチックの容器にチョコレートが入っており、それが審査員に配られ、それを一つずつテイスティングし、評価基準のフォーマットに沿って評価記入していきます。この評価基準はICAのHPで見ることができるので、興味のある方は一度覗いてみてください
(http://www.internationalchocolateawards.com/judging-system-and-forms/)

 僕はAPOYO(サポーターの意味)なので、小山シェフの評価をタブレットに入力していくだけで、もちろん審査はしません。が、しかし、一応僕もテイスティングのチョコレートをいただいたので、テイスティング体験をしてみました。小山シェフがテイスティングするチョコレートを小山シェフの評価を聞きながら僕も食べるのです。かなり贅沢なテイスティングの練習です。恐らくショコラティエを目指す人は泣いてうらやむような体験ですが、チョコレートを評価することがこれほどまでに大変だとは想像しておりませんでした。初めのうちは楽しいのですが、チョコレートは食べ続けると、油分が舌にくっついて、だんだん舌がマヒしてきます。だから、時折ポレンタ(コーンミールを粥状に湯がいたもの)を口に含ませ、舌についた油分を取り除きます。また、自分の舌が正常に機能しているかどうか、確認するために、定期的に同じチョコレートを口にして、その味を規定のフォーマットに記入し、そのチョコレートが同じ味がするか、つまり味覚が狂ってきていないか、を確認します。ただ単に個人の感覚に任せるのではなく、一定の基準を共有できるように作られたフォーマットやポレンタなどの評価の狂いを無くすように考えられた仕組みは、とても勉強になりましたが、そもそも、大した味覚を持たない僕がどれだけ必死にテイスティングをしようが、これはできるもんではないことがよくわかりました。

 審査用のチョコレートは一つ一つのポーションは小さいのですが、たくさんのティスティングしなければならないため、ぼくは途中から食べることが苦痛になってきましたが、小山シェフは黙々とテイスティングを続けていきます。
「中には面白いな、と思うものがあるが、総じて言えることは、ペルーのカカオを使ったチョコレート自体はどれもおいしいが、ボンボン(ショコラ)となると、ありきたり感を否めないなぁ。味に奥行きがなく、発想に乏しい。もっと勉強したら、もっとおいしくなりそうなものがあるんだが、なかなか味の勉強をする機会が少ないのかもしれないなぁ」と、残念そうに小山シェフが話をされていたのが印象的でした。勉強をするにも、お金がかかります。この国では若手のショコラティエは決して裕福ではありません。しかも、ペルーの地方からの出展者ならなおさらです。
 審査の合間を縫って、この日はペドロ・ミゲル・スチアッフィーノシェフとの打ち合わせ。ちょうどスチアッフィーノシェフのデモンストレーションがあったので、そのデモンストレーションも見に行きました。スチアッフィーノシェフは主にペルー料理でもアマゾン地方の食材を使った料理を中心にお店を展開されており、アマゾン地方の伝統的な料理を提供するレストランとアマゾンを中心とする南米の食材を現代的手法で表現するフュージョン料理のお店をされており、ペルーを代表する料理人の一人。そんな方だけあって、デモンストレーションもとても面白く、そしておいしかった。

 デモンストレーション終了後、明日小山シェフのデモンストレーションのときに作る抹茶のテリーヌにかけるソースについて相談をしたのですが、小山シェフは
「酸味の強い柑橘系のソースをかけたいのだけど、できればペルーのフルーツを使ってソースを作りたいので、ペルーにどのようなフルーツがあるか教えてほしい」と尋ねると、スチアッフィーノシェフは、
「今夜はあなた方をご招待する予定でした。是非、うちのレストランに来てください。たくさんのフルーツがあるので、テイスティングしていただけると思います。気に入っていただけるものがあればいいのですが」とウィンクしておられました。とても人懐っこい、それでいて、謙虚な感じの良い方で、小山シェフも、
「今日いただいたデモンストレーションの料理を頂いたが、彼の料理はもっと食べてみたいと思わせる力があるなぁ。彼からはすごいセンスを感じる」とコヤマセンサーが反応していたので、これはいい予感があります。

 前日の「会場に電気が来てない事件」のため、審査のスケジュールが押していることもあり、この日の審査は夜8時頃まで行い、急いでペドロさんのお店へ。」