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¥2,376

30日(20℃以下)
箱サイズ:縦10×横10×高さ3.5cm
特定原材料等28品目:乳成分、りんご、大豆、アーモンド
販売開始予定:2025/11/1(土)〜
言葉を拒む感情、時の流れに覆われていった記憶――僕たちの心にはまだ形を持たない問いが潜んでいる。
それらは意識の奥底で静かに息づき、ある瞬間、香りや味わいに触れることで呼び起こされ、かすかな波紋を広げていく。
香りは目に見えず、手で触れることもできない。それでも嗅覚が感知した微かな気配は直接脳の奥深くへと届き、記憶や感情を揺さぶる。喜びや懐かしさ、安らぎや欲望……意識に先んじて感情を呼び起こす、夢のような、旋律のような存在。
一方、味わいは目に見え、手に取れ、舌に触れ、味覚が捉えた豊かさが脳へと伝わる。甘味、苦味、酸味、塩味、旨味、それぞれの微細な構成が感覚の奥で広がり、情動を生み、記憶へと結びつく。五感を通じて現実感を伴いながら、僕たちの心を満たしていく。
ひと粒のショコラはただ甘美にとどまらず、記憶や感覚を揺さぶり、消え去ったあとにも余韻となって魂に反響する。そんな可能性を秘めているのだ。
その世界線に重ねたのは、パリの香水ブランド『INDULT PARIS』が紡いだ幻影の調べ。
第一章 ― Isvaraya イスバラヤ
沈黙の森に響く祈り
第二章 ― Tihota ティオタ
永遠の抱擁を告げるバニラの伝承
第三章 ― Manakara マナカラ
花と果実が溶け合う女神の囁き
第四章 ― Cuir キュイール
影と欲望を映す革の黙示
僕が魅せられた4つの香り。嗅覚に訴える表層と深層を、味覚の領域に映し替えた。
香りと味わいが響き合い、内なる世界を震わせる幻想的な残響をご体験ください。
木漏れ日の層を辿るように
静けさに刻んだ煌めきのオマージュ
熟成茶の陰翳、18年を経た南高梅酒と瑞々しいプラム。異なる酸が、森の木漏れ日のように層を照らし出し、香りを多面的にひらかせる。その深淵に、ジャスミンの花と緑茶の気配がそっと滲み、ゆっくりと2種類の蜂蜜が時を重ねる。りんご蜂蜜は森を駆け抜ける光の一閃。透明な煌めきが酸のきらめきを受け止め、味わいに初夏の風を吹き込む。一方、栗蜂蜜は秋の森の記憶。低く響く声のように甘美で重厚な陰りを与え、土を思わせる野趣が余韻を長く残してくれる。
光と影が呼応し、時が幾重にも折り重なる。まるで調香のごとく、トップからベースへと広がるその姿は、ショコラを超え、『沈黙の森に響く祈り』が捧げるひとつの調べとなる。
甘く、深く、時間を溶かすように
終わりなき至福をもたらして
「タヒチ産バニラビーンズ」、慣れ親しんだ素材でありながら、その香水では単なる甘美を遥かに超え、終わりなき至福を示しているようだった。奥に潜む正体を探り続け、辿り着いたのはトンカ豆、ラム酒、ジャスミンの花、緑茶、そしてオレンジの花の蜂蜜。それぞれがバニラの存在を支えながら、成熟した深みへと導く要素となった。
ジャスミンティーは華やかさの裏にやわらかな苦味を忍ばせ、香りに陰影を与える。花蜜はアンバーの光を帯びた滴となり、時差を伴いながら広がり、余韻を紡ぐ。その一滴が加わることで、バニラは日常の安らぎを超えて、壮大な至福をもたらす『永遠の抱擁』へと昇華していくのだ。
香水の妖艶な表現に、
味覚でもたらす官能の余韻
薔薇とライチ。パティシエにとって馴染み深い組み合わせが、香水では妖艶な光を帯びていた。そのノートをショコラに映し、味覚の世界に落とし込んだ。ライチの透き通る甘みに重なるように、カルダモンの冷ややかさとマダガスカル産バニラビーンズの抱擁が漂う。そしてクライマックス。ブルガリア産ローズ蜂蜜が薔薇の吐息と溶け合い、官能を長く引き延ばして余韻をもたらす。そのなかにフランボワーズが最後の一閃のように現れ、薔薇に寄り添いながら鮮やかに輝き、やがて儚く消えていく。
甘美の滴りと果実の儚さ。背反するふたつが重なり合い、口中には『女神の囁き』のような残響が漂い続けるだろう
絡み合う緊張と弛緩
背反の存在を味覚に刻んで
レザー、アンバー、スパイス。官能と哲学が交錯する香りをショコラへ映し出す過程は、未知で、最もエキサイティングな領域。アールグレイティーと3種の香辛料が、成熟したレザーの下地を築く。ジュニパーベリーや黒文字が深みを添え、レザーウッドハニーが時間差の立体感を与える。光と影、欲望と孤独、背反する存在が交錯していく緊張感が、そこに立ち現れる。さらに後半、ヘーゼルナッツプラリネが濃厚な温かみとほのかな食感を忍ばせ、闇の中に微かなぬくもりを灯す。柚子は、鮮烈な閃光ではなく、深淵に漂う淡い光。そのやわらかな刺激は、重厚な大人の余韻をより深く際立たせる。
重みを湛えた闇に、ほのかな温もりと光が揺らぎ、『革の黙示』はより多面的な深淵として結実する。