パティシエエスコヤマ研修旅行記2017

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Vol.5 5月11日 2日目:すし匠 WRITER:大嶋 光野

 私、管理本部、製造部の大嶋と申します。
 オアフ島2日目の夜に“すし匠”につれて行っていただきました。
 そのレポートを書かせていただきます。
ネットで調べるとなかなか予約が取れない事で有名、すし匠に来るためにハワイに来られるという人がいるくらいとの事、そんな“すし匠”に行けると聞いてテンションが上がりました。こんな機会をいただいたシェフに感謝です。
シェフ、マネージャー、西出さんの4人での食事でした。

到着して「いらっしゃいませ」という言葉で迎えられて、お飲み物を聞かれ,
私以外はまずビールを頼まれました。私はお酒が飲めなく、お茶一本で行かせていただきました。その後はシェフと西出さんは、白ワイン、日本酒と飲まれていました。
 西出さんから白ワイン、日本酒を1口づつ、試飲させていただきました。
白ワインはお口直しにさっぱりと頂けました。もっと飲めればいいのにといつも思います。

「美味しいところ少しずつ行きます!」と始まりました。「かしこまりました!」もそうですが言葉遣いの切れがものすごくよく、上等な空間だなと身が引き締まりました。

・ハワイの高級木材の“コアウッド”の寿司下駄

・最初は“ワシントンのオイスター”です。

・ガリはヤシの実でタケノコのような食感のものとハワイ産の新生姜です。

 基本的に日本にはない魚や魚介類、食材で用意しているとの事でした。
 日本にはない初めての食材を手探りで「これは食べられるのかな?」と毒味のような感覚で、お客様に提供をできるものを見つけているとの事、最初のオイスターからから本当に美味しいです。日本と場所は違えど変わらない美味しさを提供できるのは確かな考えからくる味覚があるから。本当にこの後が楽しみです。

・金目とマグロとサーモンにマウイオニオンが乗った、すし匠流 “ポキ”

・ヤシの新芽入りのいかめし、本当に繊細で丁寧な仕事の連続です。それでいてむちゃくちゃ美味しいです。

・シアトルのミル貝とパールハーバーのクレソンのお浸し。これはクレソンをワサビにみたてていてさっぱりとした後味に仕上がっておりました。

・オノのこぶ締め。ここからにぎりが始まりました。

 この“しゃり”もカリフォルニア産のコシヒカリとの事、日本のものではないことにシェフも大変驚かれていました。
 日本では水分が抜けた1年~2年たった古米を使われていたとの事でしたが、水分の少ないカリフォルニア米をつかう事で、水分の感じがちょうどよくなり、こちらでは古米を使う必要がなく、新米をそのまま使ってちょうどいあんばいだと、日本にいる時の難しい調整が逆になくなったとの事でした。
 お寿司屋さんはこのシャリに試行錯誤をされている。給水時間を長くして、水の量を減らして、炊き上げ時間を短くしたり、色々な工夫をされています。あるお寿司屋さんではコシヒカリに限らず、あまり使わない品種のお米を使用する寿司職人もおられるようです。
 このコシヒカリを使うと日本で色々工夫していたことが嘘のようで、このコシヒカリをそのまま使えばしっかりとした輪郭が残ったシャリになる。
 これぞ“アメリカ寿司”!!
 ハワイにきてやらなければ気づけなかった事、こういう本質を理解することにこそ意味があると思い知らされました。

 またシャリは2種類使われており、赤酢のものと、もう一つは4種類のお酢をブレンドしておられ、こちらも少し色味がはいったシャリでした。

・熟成ハプップ 氷水につけて3~4日寝かすそうです。

・“シアトルみるガイのレバー”レバ刺しという感じで、マウイオニオンとわさびでいただきます。

・“ベイビーレッドスナック”塩に少し付けたもの。黄身そぼろが乗っています。

・ハワイでとれたカツオに近いものにマウイオニオンのすりおろし、和がらし、青ネギとショウガを付けて。

・“ラウラウ”というハワイの郷土料理で、タロイモと鶏肉をティの葉っぱでくるまれて蒸し焼きにしたもので、それをアレンジした1品。中にサーモンを入れオパという魚のほっぺのゼラチン質の部分を葉っぱでくるみ蒸し焼きにしたもの、下の緑のソースがアスパラガスのソース、上に土佐酢のジュレ。1個の料理が一口で味わえるサイズにコンパクトに凝縮されており、1口で“ラウラウ”を味わえる逸品です。

・次は“ホワイトサーモン”初めて食べました。
サーモンはもともと白身だそうで、海に出て小さいエビを食べてオレンジ色になるそうですがたまに別ルートを泳ぎ、エビを食べずにいたものです。2000本に1本取れる本当に貴重なものです。本当にびっくりしました。普通のサーモンとは違いサーモン臭さがなく甘みの強いおさかなでした。

・ロブスターの紹興酒漬け
これはロブスターを生きたまま紹興酒につけて、3、4日くらい生きてその間にいい仕事をし、臭みが抜けていい感じになるとの事。これもまた美味しい一品でした。

・まぐろの漬け

・“モイ”ハワイの王族が食べていたお魚。
赤シャリ麹を作って、2~3週間発酵させて“飯鮓”にしている。味がくさかったり、薄かったり、色々なのでこういう作り方をしているとの事。
大将曰く「これからは発酵の時代だ。昔の人のやり方はすごく理にかなっている。しっかりと見直さないといけないとの事。キムチなんかもそうだ。旨、辛、酸の酸が大事、酸が行き過ぎると腐って火を入れないといけないし、その逆はキムチに熟成されていない。韓国ではこの酸の美味しいのを保つためにキムチを保管する冷蔵庫はゼロ度にしている。そこがいい。われわれは魚を氷につけている。これが“ゼロ度”でこの氷と塩が魚にはちょうど良い」との事。“ゼロ度”がちょうどいい具合に発酵が進むという事、昔の人は感覚でそういうやり方をしていたのかはわからないが、これからはなぜそれがいいのかという事を理屈からしっかり勉強しないといけないという事をお話しいただきました。
 シェフも南米やペルーの発酵文化がびっくりするぐらいすごく面白いとの事。彼らは今、他国の発酵にも興味を持っていて、キムチなどはものすごく使っているとの事でした。ペルー料理にもキムチは必ず使われていた。そのことに刺激を受けて、シェフもキムチのパウダーを作ってキムチのチョコレートを作られました。それは韓国のキムチを使ったというよりもぺルーでの発酵文化から触発されて作られたものであるとお話をされていました。
 こういうお話を伺うと自分自身がこういう物事の本質に気が付いて、高い意識を持って自分自身がどれだけ仕事ができているのかと考えさせられました。

・ハワイの枝豆をすり流しにした1品、お塩がモロカイ島のものでかけてお召し上がりくださいとお話をいただきましたが、
シェフから塩を最初に口に入れたほうが甘さが引き立つと教えていただき試すと全然違う味わいになりました。スープの中に入れてしまうと塩が溶けるのに時間がかかりますが、先に口に入れることで塩を先に感じ、全く違う味わいになりました。ケーキでも同じことが言えます。それぞれのパーツの硬さの違いで味わいが変わります。常にそういうところを意識して味わっているシェフならでは感じ方ですし、そういう捉えたかをすることでシェフのように作り手の本当の味を的確に感じ、見抜けるようになるのではないかと改めて思いました。

・右 中トロ

・“オパ”赤マンボー
酒粕とお味噌につけてある。腹の一部分しか使えないが、油が甘いとの事、油が多い魚だからフィンガーライムが合う。さっぱりといただけました。
この黒いアケビのようなものがフィンガーライムでシェフも興味をそそられていました。シェフも中身の透明の粒はご存知でしたが、そのままを見るのは初めとの事でした。“プチプチとした”食感が面白く、後からライムの酸味がくる面白いフルーツです。オアフ島やハワイ島になっているとの事、シェフも「畑になっているのを見てみたいとお菓子にも使える、クラッシュゼリーの上にトッピングすると面白いんじゃないか」と興味を持ちでした。

・お口直しの“小さいトマトのピクルス”

・サンタバーバラのうにとホワイトサーモンを初舞漬けにしたもの。海苔は日本産。
ハワイは磯がなく海苔などがない。ウニなどは余り育たないそうです。

・1週間氷の中で寝かせた“エージング 大トロ” 

・サヨリの大きいの“かもぬき”

・いちご蒸し ウニとアワビの茶わん蒸し
サンタバーバラのウニ、ハワイ島のアワビ、黒と白のキャビアが使われています。何とも贅沢な1品ですが、それでもほっとする味がすごい。

・あん肝とスイカ
ロスアンゼルスのアンコウの肝、スイカの奈良漬けのお寿司です。
シェフはこのお寿司を元にショコラを生み出しているとのお話でした。
一番最初に出会ったのがこの四つ谷のすし匠。そこで食べたものがヒントになっている。その時にめっちゃ合うとおもい、なんであうのだろうとずっと考えていて、その後、京都の料理人 ステファンパンテルさんのところで食べた“奈良漬けとフォアグラ”が合うと気が付いて肝とチョコレートは両方とも油だからと置き換えて考えるようになったとの事でした。今年の新作の試作ではスイカとの組み合わせも作ったが、賀茂ナスが一番インパクトがあり美味しかったとの事でした。

・あん肝とヤシの新芽をバルサミコに漬けたもの
両方を試させていただけることになりました。ベストマッチはスイカとの事です。

・おはぎ
マグロの中落ちと油を出して味を足したもの、沢庵、マウイオ二オンをおはぎのように作ったもの、上に載っているのがマカダミアナッツ。
豚まんでも間に油をいれてほぐすから美味しい、肉の塊の豚まんなど美味しくない、お好み焼きも、刻んだキャベツが入っているからフワフワになりますし、餃子も野菜がバランスよく入っていないと固くなってしまいます。それとよく似ています。理にかなった美味しさ。

・だし巻き
干したホタテともよりを合わせたお出汁。「ぱくっ」と食べれる一口サイズ。だしを食べるようにいただきます。

これで一旦終わりですが、ここからはお腹の具合をみて頼みます。
私はシェフについていくだけ。美味しい物はどんどん頂けます。

まだ食べていないものを紹介していただいて、その中から次に

・“ソフトシェルクラブ”

・“白エビ”1週間くらい寝かせてこぶ締めにしたもの。

・“まぐろで大トロ”
春の大トロはあっさりめ、下田の大トロ。マグロはジャパニーズです!間違いなしの美味しさ。

・いぶりがっこに白シャリを3か月くらい発酵させて作ったチーズがサンドされている1品。めちゃ旨でした。

・まぐろの頭でだしを取った“あひだし”スモークの香りが美味しさをそそりました。

・“チェリーストーンクランプ”カリフォルニア産の貝、オイスターバーなどでは生食べますが、こちらでは軽く火を通して江戸前風に。

・“タロイモのケーキ”日本では自然薯とかに芝エビとかすり身を練りこむ。これはタロイモに甘えびのすり身を練りこんだもの。まるでお菓子です。

・葛きり ハワイのブラウンシュガーで作った黒蜜でいただきます。
思っていたより柔らかく、美味しい1品です。

・マンゴーとパイナップルのアイスをシェアしていただきます。
トッピングには特別にフィンガーライムをトッピングしていただきました。パイナップルよりもマンゴーの甘さにライムの酸がよくあい美味しかったです。

大将、曰く
「日本の魚はどんどん高くなっている。1万円のウニが5万になって10万までになっている。高騰、高騰でブランドになっているところがある。日本の魚屋さんと漁師さんは潤っているが、これからは海外の魚を美味しくしていかなといけない。高いからと言って日本人が日本の魚を食べなくなってしまう。
“日本の魚だけ美味しい”、なんておかしいし、そんなわけはない。
確かに日本の漁師さんは釣り方も下処理もすごく上手、情報にも長けていて、素晴らしいが、そういうことをここハワイで教えていかないといけない。
なるべく、ハワイの漁師さん、魚屋さんと向き合って、“ライバルは東京だ!”なんて感じで頑張っていきたい。」
そんな強い決意を感じるお話を聞かせていただきました。
お寿司をとおして、日本の社会を心配している。そんな大きな考えを持った人だと思いました。こういう考えがあるから日本で成功しているのにハワイでまた再挑戦しようと思えるのだと、ただのすし職人の域を超えて飛び越えて、“すし”の周りにあること一つ一つを深く掘り下げて、その業界の未来を考えて生きている姿はシェフにも通じるものを感じました。
 若いころから、自分がその時の立場でできる精一杯の事をコツコツとやり続けて、物事の本質を深く掘り下げつづけて、今もハワイで世の中に影響を与え続けられているのだと感じました。ハワイで日本の事を思い、同じ業界で働く人たちを引っ張っている姿は本当にかっこよかったです。
ハワイでこんなに美味しいお寿司が食べられるとは思いませんでした。この機会を頂けたことに本当に感謝致します。

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