vol.28
「flow」
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 毎年、新年2日に小山シェフのご自宅に押し掛けて家族で食事をすることが習慣になっています。今年はホームページを作成しているサンクリエイツの永田さん家族とパッケージデザインをしているブロッサムの倉橋さん家族、カメラマンの石丸さん家族と我々庭師家族でした。
 その会の中で
「しかし、本当にシェフが最高職人でよかった。シェフ以上のクリエイターが存在することなんて想像できない。」なんて冗談をいいながらも、 「小山シェフと一緒にもの作りができて本当によかった。」とデザイナーの倉橋さんが話をしていました。多分、それはシェフと仕事することで、自分が有名になる、なんて小さなものじゃなく、シェフと一緒になにかを作ることで、ものの作り方を教わるからでしょうね。いや、それ以上のこと、小山シェフとしかできないことがあるのだと思います。「僕は(パッケージに関して)何もしてませんよ。小山さんのお手伝いをしているだけ。」と倉橋さんは言ってました。それは、小山シェフの味や思いがあるからこそ、生まれるパッケージ。逆に言うと、エスコヤマのパッケージは小山シェフの思いやメッセージがなければ成立しないパッケージのデザインであるということだと思いました。つまり、エスコヤマのデザインは商品をかっこよく見せて売上を伸ばすためにあるのではなく、作り手の思いを伝えるためのデザインであり、だから、デザインに嘘がない。パッケージデザインで差別化を行おうとして、嘘の多いデザインが氾濫している今の時代に一石を投じるものだと思います。過剰なパッケージを嫌うヨーロッパ人が小山シェフのパッケージを賞賛したのはそんな理由からではないでしょうか。

ブロッサムの倉橋さん(左)カメラマンの石丸さん(右)の写真

 1月18日から大阪伊勢丹で小山シェフとパッケージ、グラフィックデザイナーの倉橋さんと写真家の石丸さんの『三人展』という個展が始まりました。ここでは表現者としての三人がスイーツを軸にアートディレクションをされています。小山シェフの思いがいかにスイーツとなり、デザインとして昇華されているか、また写真として表現されているか。ここではこの三人だからできるアートな表現を楽しむことができます。
 2月からはベルギーの博物館でピエールマルコリーニと小山シェフのパッケージの個展があります。これはパリのサロンドショコラで小山シェフのブースを見た博物館の人が自国のチョコレートのレベルに危機感を感じたところから企画を思いつかれたそうです。かつてチョコレートと言えばベルギーが代表でした。しかし、時代とともにその座をフランスに譲りそして、今日本にも抜かれてしまっている、ということを小山シェフのチョコレートの味やそのパッケージ、写真を見て館長は感じたそうです。このことを消費者であるベルギー国民に伝えなければならない。そして、消費者に伝えることで、ベルギーのショコラティエにも危機感をもってもらいたいという考えでピエールマルコリーニのパッケージと小山シェフのパッケージを対比させて個展をすることになったようです。この高い意識にはびっくりさせられます。自分の国に黒船を呼んで、「未だにチョコレート先進国だと信じている我々の体制を壊して開国してくれ」、と言ってるみたいなもんです。

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更新日12.2.3


vol.30 「マダガスカルに行くぞ」

vol.29 「サプライズのその先」

vol.28 「flow」

vol.27 「目に見えないもの」

vol.26 「バトン」

vol.25 「人を雇うこと」

vol.24 「ホンモノ」

vol.23 〜今年たどり着いた場所〜

vol.22 久住章のトイレット

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