vol.29
「サプライズのその先」
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 話は戻って、コヤマシェフの言う通り、雑草抜きはたくさんのことを学べます。日々の地道な作業の繰り返しの大事さは雑草抜きやお水やりから学べると思います。また、目は見えているようで、実は何にも見えていないということに気がつくにも雑草抜きのいいところ。雑草抜きは掃除と違い、地面を這いつくばります。でも、そうすることで、小さい小さい雑草の芽吹きや虫達の動きがみえてきます。いつも見えているつもりになっていても、本当に見ようと這いつくばって初めて見えてくるのです。ぼんやりしていると実は何も見えていないということに雑草抜きをしていると気がつかされます。

 雑草抜きは地道な作業の大切さを伝えるにはいい方法だとおもうのですが、今回はもう一つ私の中で裏のテーマがあります。
それは、
「丁寧な仕事、心をこめた仕事の大事さ」です。

これは自分自身に課したテーマです。
コヤマシェフはこの「『丁寧な仕事』をし続けた結果、沢山の方が自分のお店を支持して下さっている。フランスでのショコラの受賞もその延長線上でしかない。これが、ケーキ職人としてではなく、日本人である自分が最も大事にしていること。」とよくお話されています。確かに、コヤマシェフが生み出すモノは本当に丁寧な仕事がなされています。だから、コヤマシェフのお店の一部を作る人間として、私もこのソウルを持って仕事しなければなりません。しかし、それは一朝一夕に身につくようなことではありません。
だから、今回の雑草抜き研修では今自分が出来る丁寧さ、心の込めた仕事を自分なりに彼らに伝えてみようと思いました。
その方法は「手作り昼ご飯」です。
社員研修とはいえ、お庭仕事を手伝っていただいているのだし、せめてお昼ご飯でもみんなの為に用意しよう、という感謝の気持ちです。しかし、それを心を込めて行うためにも手作りの昼食がいいと考えました。大したことはできませんが自分が思いつく筒いっぱいの食事、それは
「握り飯」。

  もう少し何かあるやろ、っと突っ込みたくなるかもしれませんが、理由は次の通りです。私は独立を機に、お米作りを始めました。それはもし、商売が立ち行かずに食べてゆけなくなってもお米さえあれば・・・・というのは冗談で、庭師として最も大事なことは四季を深く知ること。そのために一番いい勉強方法は米作りだと感じたからです。(ちなみに、この発想もコヤマシェフと仕事をさせていただいたからこそ、その必要を感じて生まれたものです。)

なぜ、私が握り飯を選んだか、もうお分かりですよね。そう、お金がないので、お米ならタダだから。いやいや、そうじゃなくて、これは松下家の手作り。地道な作業の積み重ねと愛情とで作られたお米です。それを前日に精米して、時間をあわせて炊きたてを握ってもらいました。握ってくれたのは、私の嫁の純ちゃん。一家総出の握り飯です。こんなことを説明するのは無粋ですが、こんなにしたんだから許して、と言い訳したのではなくて、今の自分がコヤマシェフの伝えたいことをかわりに伝えようとすると、言葉ではなく、握り飯だったということです。本当は、それがお庭から伝わるようにしたいですが。
 「丁寧さ」を身につけるには私には本当にまだまだ。でもその地道な積み重ねだとおもいますが、今回の握り飯が一つの点として、できるだけ沢山の点を打って、それが線になって現れるように続けて行きたいとおもいました。

食事をするスタッフの様子
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更新日12.7.9


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