シェフと庭師Mの庭造り日記

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Vol. 33

コヤマシェフと行く、カカオハンティング第三弾
「カカオの源流を訪ねて」
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 翌日もシエラネバダ山脈のカカオ農家さんを訪問。昨日はシエラネバダ山脈の南側で、今日は南側の農家さん。
シエラネバダ山脈はとても大きな山なので山の側面によって気候が全然違います。本日向かった所はどちらかというと乾燥した森でした。植物に混じってサボテンが生えています。昨日見た自然の姿とはかけ離れていたので本当に同じ山にいるのか不思議でなりませんでした。

大きな渓谷をいくつも越えたところに、その村はあります。入り口には拳銃を持った警備員が立っています。

「彼らがいるってことはここは比較的安全だってことなんです。」と小方さん。
近年までコロンビアでは政治的な対立により、反政府ゲリラが山に潜伏して活動をしていました。その勢力は以前に比べると相当弱まってはいるものの、ゲリラなどからの治安維持のため、山の集落ではこうした武装した警備員が配置され、部外者に対する検問を行っているそうです。現在でも国境付近にはゲリラが潜伏している場所があるようで決してゲリラとの戦いが終わった訳ではありません。

 検問をすぎると村に到着。とても小さな村で、カラフルな色使いはラテンアメリカのイメージ通りです。ここにも古いカカオの木が農家の裏庭にありました。

樹齢80年程。この木から接ぎ木用の枝を採取しました。技術士のギジョさんが接ぎ木をするそうです。小方さんはこのようにいろいろな場所にあるカカオの木を探しては、その実のテイスティングをして優良な実を接ぎ木して、種を保全する活動を行っておられます。
しかし、カカオハンターの仕事はこれでおわりません。むしろ美味しいカカオを探し出してからが大変。それを栽培するため、接ぎ木、苗木作りから生産農家探し、農業技術指導、出来た実の発酵・乾燥の指導、そして、乾燥が終わったカカオの実をトラックで集荷。集荷後は自らの工房で検品しクーベルチュールを作るまで、まさに最初から最後まで一貫して行っているのです。

 余談ですが、私、庭師としてはこの農家の裏庭事情を知る事が出来るのはとても勉強になります。「世界の農家の裏庭」、って本でも出版してみたいくらい、農家さんの裏庭ってその国や地域の個性が出るんですね。ここ農家さんの裏庭にはカカオの木があって、コーヒーがあって、オレンジやレモンの木がある。いかにもコロンビアって感じですよね。
また、よく見ると沢山のハーブも植わっています。普段の生活に密着した植物がお庭に植えられているのはどの国でも共通しています。それにしても、コロンビアのお庭は夢のようなお庭ですよね。自分の家で出来たコーヒーを飲めるし、やろうと思えば自分の家で出来たカカオからチョコレートを作る事だってできます。しかし、実際はコロンビアではチョコレートとは日本で言うところのホットチョコレート(飲み物)のことで、板チョコを食す文化はまだ大きくは浸透していないそうです。

 ここの農家さんを出発し、次に向かったのは南アメリカ大陸の最北端の港町サンタマルタ。お昼には車に乗って一旦ホテルに戻って、石丸さんはカカオの撮影。小方さんとナチョさんが傍らで撮影のお手伝いをしています。
「まだ我々はここまでできないんです。」と石丸さんの撮影した写真を見ながら小方さんとナチョさんが唸っています。「コヤマシェフ、我々もゆくゆくはこうしてしっかりとカカオを紹介するための写真を撮らなければなりませんね。」としきりに感心されていました。
「実際、産地でしか撮れない写真があるんです。その写真には必然的に産地感がでるんです。それを伝えるのが我々の仕事でもあると感じています。そこは大事にしてゆかないとね。これも我々がわざわざ産地に来る目的の一つなんですよ。」とコヤマシェフ。
 撮影後、移動。サンタマルタまで約4時間のドライブです。途中道路工事で結局は5時間以上かかってしまいましたが、これがコロンビアの道路事情。

コロンビアの道路整備は非常に明快で、お金になるものを運ぶ道路から順番に整備されています。だから、石炭を運ぶ道路、コーヒーを運ぶ道路、昔コカインを運んでいた道路なんかはとても広く大きく道も平でどれだけ大きな車でも走る事ができます。残念ながらカカオ農園に通じる道はまだガタガタのボコボコ。この国の道路整備ができない理由の一つにその独特の地形があげられます。この国は国土全土が山脈の上もしくは山脈と山脈の間にあるようなもので、南アメリカ大陸を貫くアンデス山脈の北端に位置します。活火山も多く、起伏の多い山あり谷ありの地形で道路を整備するにもコストがかかりすぎるのでしょうね。

 5時間のドライブを終え、サンタマルタのビーチの目の前のホテルに到着。あたりは暗くなりましたが、すぐ近くに波の音が聞こえます。目の前はカリブ海。夕食は軽めのスープとサラダを頂いて、早めに部屋に戻りました。次の日もカカオ農園に行き、そしてアルワコ族のお宅訪問です。