シェフと庭師Mの庭造り日記

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Vol. 33

コヤマシェフと行く、カカオハンティング第三弾
「カカオの源流を訪ねて」
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   帰国後、コヤマシェフは今回の旅行を次の様に振り返りました。

 「もの作りの人間にとって人生は旅のようだと思います。現在という大きな流れの先端から源流にさかのぼってゆく旅。遡ってゆくと、大きな流れは実は小さい支流が流れこんで出来上がっている事に気が付きます。そして、その支流をまた上ってゆく。そうするとそこには流れを生み出している泉があるんです。
今回のカカオの旅もそのカカオの泉を見てみたかったということだと思いました。それはかつて南アメリカを征服したスペイン人がカカオを発見した場所。カカオから出来るチョコレートを発見しそれを自国に持ち帰り、それが瞬く間にヨーロッパ全土を席巻した。そして、それが日本にやってきたのはカカオがヨーロッパに渡って250年もたった後のこと。そして、今私は自分の目でもう一度その大きな時間の流れを遡って源流を見たくなったのです。

 あの時カカオは略奪された戦利品としてのものだったが、今回私が見たものは現地に昔からある大切な果実を丁寧に栽培し、それを丁寧にクーベルチュールにするまでの過程を小方さん中心にコロンビアの多くの人々が心を込めて作業する姿でした。
その姿を見た時、この地に来て良かったと思いました。カカオの源流からみる景色は河口にいる私には想像もできませんでした。しかし、これを見る事で、また新しいものを生み出す原動力を得る事ができたとおもいます。いや、むしろその源流を知らずにものを作る事は本物を知らないでものを作るようなことだと思います。
それは自分が望むもの作りの姿勢ではありません。単純ですが、本物を知らないのに、本物を作る事なんできませんよね。

もの作りはやはり旅ですね。いや、たいそうな言い方かもしれませんが、人生は旅ですね。ものごとの源流、本物を知る旅だということを感じました。

また、ヨーロッパ至上主義の洋菓子の世界で洋菓子はヨーロッパから勉強することばかりに力を入れてきた歴史を振り返ってみると、でも実はヨーロッパのお菓子文化はじつは南米に影響を受けていたんじゃないかな、って今回の旅で思う様になったんです。
いや、そうじゃなかったにしても、公平な目で南米のガストロノミーを見てみたいと思いました。恐らく、そこからは沢山のことを学ぶことができるような気がします。中南米は面白い。次はメキシコかな。」

 僕自身、今回の旅でカカオに対する考え方がとても広がり、また深まりました。なによりコロンビアという国に対する誤解をしていたことに気がつきました。コロンビアはとてもすばらしい国です。それはコロンビアの自然にふれて感じたことです。
多種多様な植物、温暖な気候、1年を通じて果物がとれ、年3回お米ができる。何よりも美味しいカカオがありました。これ以上豊かな国はそうはないと思います。
現在の豊かさの指数は経済的な生産量をさしますが、それはこのような豊かな自然を持たない貧しい北側の人間が作り出した基準です。豊かな自然を持たない人たちは自然の恵みを得るために、お金が必要です。しかし、いつしか交換のためのお金を沢山持つ事が豊かさだと勘違いするようになったのじゃないでしょうか。

アルワコ族の人たちは経済的には我々に比べればとても貧しいかもしれません。しかし、彼らは豊かでした。それは何かの基準で判断したのではなく、彼らから豊かさを感じたからです。
家族の絆、コミュニティーとの絆、自然との絆、我々が失って気がついたその大切さを彼らはそれを失う前から大切にしています。

 「本当の豊かさとは?」
カカオの産地を訪れるたびにすこしずつその輪郭が見えてきたように思えます。貧困にあえぐ国をおとずれるたびに、豊かさの輪郭がはっきりしてゆくのは皮肉な話ですが、今の日本では感じることのできない豊さが貧しいと考えられている国々にはあります。
カカオの旅、これは僕にとって豊かさとはなにか、という問いのヒントを探す旅であることに、今回のコロンビアの旅で気がつくことができました。コロンビアの旅にコヤマシェフ、石丸さんと訪れることができたことを心から感謝しております。ありがとうございました。

 また、さまざまな段取り、調整ごとなどカカオハンターの小方さんには本当にお世話になりました。ありがとうございました。あと、この日記を書くにあたり沢山のアドバイスを頂いた事も心よりお礼申し上げます。くれぐれも今回お世話になった皆様、特に、ナチョさん、ギジョさんにはよろしくお伝えください。カカオ・ブランコ、日本で楽しみにお待ちしております。