シェフと庭師Mの庭造り日記

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Vol. 36

終わりなき旅
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 歓迎会会場の横に醗酵、乾燥施設があります。ここではOriginal Beansのジャンさんが醗酵、乾燥、苗の育て方、カカオの品質について丁寧に説明をしてくださいました。
ここでは6~8日間醗酵させているそうですが、その説明を聞くなり・・・・・・
「え?少し長いな」
と小山シェフ、小方さん、札谷さんが少し驚いた様子でお互いの顔を見合わせておりました。それもそのはず、醗酵の長さが酸味とフルーティーさのバランスに大きな影響をもたらします。長く醗酵をすればするほど、カカオの香りは失われる傾向にあります。

 「醗酵に関してのポイントは何日間醗酵させることが正しいというわけではなく、どんな味を作りだしたいか?ここのカカオのポテンシャルとどんなカカオに仕上げたいかということをイメージできていれば問題ないのですけどね」と、小方さんは付け加えてくださいましたが、
「それよりも、気になるのは醗酵場所の床の汚れ。床からもカビや雑菌は入ってきます。床をきれいにするだけで、もっと良い醗酵ができるのになぁ。あぁー、床洗いのためにしばらくここに滞在したいなぁ~」と、小方さんはマニアっぷりを発揮したコメントをされておりました。

 醗酵を終えた豆の乾燥は屋根の下で1、2日。その後天日の下へ移動して乾燥させるそうです。
ここの空気はとても乾いているので、急に天日にさらすと、豆が乾きすぎると説明されていました。この地域はなんといっても乾燥していることが最大の特徴で、乾燥しているがゆえ、病気やカビが蔓延しにくいので、カカオが育てやすいそうです。反面、乾燥しているということは、水不足の心配が付きまといますが、それは、この写真で見ての通り、山からの豊かな水があり、水路を作って農園全体にいきわたらせているのです。とても恵まれた場所です。

 苗は近くの山からこの地域特有のカカオを見つけては、挿し木したり、接ぎ木したりしているようで、カカオは自然交配するものの、オリジナル×オリジナルのような交配もあるので、ただ単なる掛け合わせの品種とは少し異なり、そのことはカカオの特徴的な色や形状、肌合いでなんとなくわかりました。ここピウラはペルー北部ですが、地域的に言うとエクアドルとの国境沿い。車で2時間も走ればエクアドルの国境にたどり着くような場所で、それゆえ、「この地域のカカオはエクアドルのカカオの特徴も備えているように思う」、と小山シェフと小方さんで話をされていました。

 醗酵施設の視察を終えて、次は農園です。

 少し車で移動したところに農園はありました。
「この灌漑用水がうらやましい。これがあれば、アルアコのみんな喜ぶだろうなぁ」と小方さんが思わずこぼした一言は本音だと思います。この灌漑用水があるからこそ、この乾燥した地域でカカオを育てることができるというのはよくわかりました。

 ここのカカオはとてもホワイトカカオ(種の中が白いカカオ豆を持つカカオのこと)が多く、実際にカカオの種を切って見せてくださいましたが、真っ白のモノから、一つのカカオの実の中に、いろんな色の種が混ざっているものまで様々。これがいわゆる、ピウラケマゾンカカオブランコです。

 「でも、必ずしも、ホワイトカカオが良いわけではないと思います。いわゆるホワイト信仰がチョコレート関係者にありますが、その考え方は必ずしも正しいわけではないと私は感じております。(種の中の)色の濃いいカカオ豆でもすごくいいものもたくさんあると思います。逆に白い豆でもとても強い渋みを持っているものもあります」と後で教えてくれたのは札谷さんです。
 「確かに。そんな簡単なものではないことは、少しずつ理解できてきたような気がします」と、小山シェフは慎重に言葉を選びながら、相槌を打っていました。
小山シェフはカカオ豆に関しては、いつも以上に言葉選びに慎重になります。それほどカカオの味は繊細なものであると同時に、小山シェフは自分自身がまだカカオについて理解できていない、という立ち位置を崩しません。この慎重な姿勢は、小山シェフのモノづくりを理解する上でとても大事な要素だと思います。産地に訪れることで、知っていることがふえてゆくのではなく、知らないことの多さに気が付くのだと思います。それが、慎重に理解を深める努力へとつながるのだと思います。

 この日はまだペルーのカカオ農園の訪問の初日。初日から刺激が盛りだくさんです。初日が体も一番きつい。今日はホテルに帰って、シャワーを浴びて、みんなで食事をして、ホテルで体を休めることにしました。