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≪7/6 7:30に出発。晴天≫
今日も産地に向かいます。しかし、その前に、ピウラ市内にあるパネラ(きび砂糖)工場にお伺いしました。ここでは現地の方の説明がなくとも、小山シェフと小方さんの説明でメモができないくらい詳しい情報量を頂きました。砂糖に関する知識は相当豊富なお二人。
砂糖の結晶化の温度が120度だという説明を聞くと、
「ミネラル分が豊富だから低い温度で色が付くのだと思うよ。おいしそうな色に見えるよな」と小山シェフがサラリと補足説明してくれました。
「パネラの独特の酸味は少し醗酵しているからなんだと思う。そういえば、この色の違いはどこからくるのかなぁ?」と一山一山微妙に違うキビ砂糖の色の違いに目を向けています。素人の僕には決してそこに目が留まりません。
かと思うと、「パネラはかき氷の密に向いているな。ってことはカフェフラペチーノにも絶対合うよ。空港で飲んだカンペシーノ(コーヒーにシナモンとブラウンシュガーを溶かしたドリンク)を覚えている?あの発想と同じこと」
と今度は味のマリアージュについての話になります。僕は料理人でもパティシエでもありませんが、小山シェフの話を聞くと、「日本に帰ったら、パネラを使ったかき氷屋しようかなぁ」と思ってしまいます。
このパネラ工場の訪問の際、産地別のパネラのテイスティングをさせていただき、二日後に控えた、サロンデルショコラーテ・ペルーの中で行われる小山シェフのデモンストレーションで使うためのパネラをゲットすることができました。
さて、パネラ工場を後にして、次はピウラ県のチリリケという場所にあるカカオ農園に向かいます。が、しかし、肝心の小山シェフが見当たりません。
「おーい、まっちゃん!ガムシや!ガムシ発見!」とパネラ工場のトラックヤードの端っこで、こっち来い、と手招きしています。いつの間にあんなところまでいったのだろう、と思いながら、小山シェフのいるところまで走ってゆくと、
「ここにいっぱいガムシの死骸がある。なんでやろ?あああ、照明や。この工場夜間照明がすごく明るいな。だから、その光に集まってきたんだと思う。ってことは、この近くに池か田んぼがあるのかもしれないな」と金田一少年の事件簿ばりの推理を展開させ始めました。
「ゲンゴロウに見えるが、これはガムシだ。絶対にそう。ちょっとネットで調べてみよう」
遠巻きにトラックの運転手さんたちが好奇の目でこちらを見ています。
「あの日本人たちはなんであんな死んだ虫を集めては写真を撮っているのだ?」と言わんばかり。だが、この虫に対する情熱も農家の人たちに小山シェフが受け入れられる愛すべき側面だと私なりに分析しております。
産地を訪れるお客はカカオには興味があるが、虫は苦手な方が多いと思います。だから、農家の方々も大切なお客さまである外国人が嫌がる虫を退治することに神経を尖らせているシーンをたびたび目にしたことがありますが、我らの小山シェフは違います。
農家の方が殺そうとするところを制し、虫を捕まえて写真を撮ったり、ネットでその虫の名前を調べたりしております。何なら、しばらく、虫探しに夢中になり、どこか行方が分からなくなることも、今まで一度や二度ではありません。コヤマシェフの虫愛に農家の方はびっくりして、逆に、虫を捕まえて持ってきてくれたりします。(蛾は大の苦手ですが)農家の方にしてみれば、虫が嫌いじゃない人が来たことへの驚きと、それが彼らにとって害虫であったとしても、自分たちの環境に好意を持ってくれる小山シェフの姿は純粋にうれしいのだと思います。
話は逸れましたが、遠くの方で、ルイスが手招きをしています。
「Koyama,please! We are late!」とルイスさんの悲痛な声が聞こえてきました。
「シェフ、急ぎましょう。時間がないみたいです。」
「まっちゃん、これはガムシやで。ほら」とすでにネットで調べて画像をこちらに見せてきました。
「ガムシとゲンゴロウの違いはな・・・・・・」とゲンゴロウとガムシの違いや小さいときにこの甲羅の艶に驚いた話、後ろ脚にヒレがあることが水中生物の証であること、光に集まる習性など、カカオ農園に行くまでの道中、虫博士コヤマススムのガムシ談義が続きました。小さいとき、ゲンゴロウとガムシの違いを知った時の感動を今でも鮮明にお話しされていました。またまた、話はそれますが、これもコヤマシェフのモノづくりを理解する上でとても大切な一つの軸です。今回の小山シェフのプロフィール写真。虫眼鏡を持ったコヤマシェフと小さい頃の小山シェフ。自分の好奇心が赴くまま、虫眼鏡をもっていろんなことを観察し、調べ、自分が見つけた感動や発見を両親や近所の人達に発表していたあの頃のスタイルと、大人になった今でも自分の好奇心を触覚にして、いろいろな産地に赴き、そこで感じたインスピレーションを形にして、発表してゆくことは、精度の違いこそあれ、まったく同じで、これこそ、コヤマシェフのモノづくりの根幹です。
昨今の幼児教育の多様化や専門化は、それはそれで大事だと思いますが、自然から得る感動は必ず子供たちの感性を高めてくれる一番の要素だと思いますし、それが、日本を代表するショコラティエを生んだ事実をしっかり考えるべきじゃないのかな、なんて少し偉そうなことを思ったりもします。
ちなみに、プロフィール写真の横の小さい頃のコヤマシェフとして映っている少年はコヤマシェフの次男。もしかすると、この写真は、次男の将来の姿を写した写真なのかもしれませんね。
キビサトウの工場を後にして、向うはチリリケ。
Chililique(チリリケ)までは車で3時間、そのうち1時間半くらいは舗装されていない道が続きます。背骨が痛い…前日も同じ道を走ったような気がしますが、おそらく違う道なのでしょうが、違いの区別がつきません。砂漠の景色は素人には同じように見えます。
砂漠地帯を1時間ほど走ると、昨日と同じく遠くに山が見えてきましたが、その高さはそうとう高そうです。その裾野にあるチリリケはそんなに標高が高いわけではありませんが、舗装されていない山路をいくのは極端に時間がかかります。
しかし、日本で舗装されていない道はほとんどないので、それはそれで面白かったりします。ちなみにピウラ市内でもたまに舗装されていない道がありました。
無舗装の道は「産地に来た!」という感覚を改めて感じるとともに、日本もかつてこんな舗装のされていない道がたくさんあったことに気が付かされます。そして、日本の発展がいかに日本の景色を変貌させたかを思います。
山道は昨日より長く感じました。途中、ルイスさんの友人のモトバイクのドライバーに出会い、小山シェフと僕はモトバイクに乗ることになりました。バイクで座席を引っ張るこの乗り物は、日本ではまず見かけません。
バイクは山道を走るようなオフロード仕様になっているようには見えないし、明らかにバイクの大きさの割に引っ張る座席が大きい。どう考えても引く力が足りていない感じがします。初めて見た時から、この楽しそうな乗り物には乗ってみたいと思っていましたが、できれば舗装された道が良かった、と思いながら、恐る恐る座席に乗り込み、いざ出発です。
この乗り物はスピード感が半端ないです。言っておきますが、決してスピードが出ているわけではありません。スピード感です。そのスピード感を演出しているはこのエンジン音。バイクのエンジン音はどう考えても悲鳴を上げており、音だけですごくスピードが出ているように思えます。しかも、囲いが一切ないので、体全身に風を感じるし、座席は地面に近く、これもまたスピード感を盛り上げてくれいました。後ろを振り返るとものすごい砂ぼこりを巻き上げていました。座席は木製で、お尻の痛さは覚悟していたのですが、思いのほか快適で、むしろ車より心地良かったぐらいです。しかも、車より視界が広いので、結果として、この状況では最高の楽しい乗り物でした。
山道の角度はだんだんきつくなり、時おり水が流れた沢のような場所もあり、それもこのモトバイクは越えてゆきます。谷越え、山越え、どこまでも。
想像以上にこのバイクはタフにできており、というか、毎日こんな過酷な使い方をして壊れないのが不思議です。意外と往来が多い道で、車、モトバイク、ロバ、馬、牛etc 色々な移動手段があり、色々なものを積んで運んでいました。この道なき道の先には人の住む村があるのでしょうね。