vol.30
「マダガスカルに行くぞ」
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 しばし子供達の遊びを眺めていましたが、子供達とさようならして、大統領官邸のある丘の散策に向かいました。基本的に見るものすべてに興味を持ってしまいます。今回のマダガスカルの目的の一つは
「ショコラの新店舗の素材やイメージを探しに行くこと。」
これはとても大切な任務です。石畳や石積みの壁。細い路地。崖からむき出しになった根っこ。赤い土。面白いと思うものはとにかく写真を撮ります。コヤマシェフは今回の旅の最中にショコラの建物のデザインしていただいている橋本夕紀夫さんやお店の左官を担当していただく久住有生さんに80枚もの写真を送っています。その時見たて面白いと感じたものを直感に従って伝えてゆく。それが直接的に建物に関係なくても。コヤマシェフがよくやるもの作りの方法の一つです。面白かったのはカカオ農園でマダガスカルのヤスデに出会った時のこと。

ヤスデの写真

「このフォルムめっちゃかっこいいな。縞模様になってるけど、赤色の部分が少し膨らんでるんや。誰がいったいデザインしたんや、この虫を。」と食い入るようにヤスデを眺めていたかと思うと、それをすぐさま写真に撮り、パッケージのデザインをしていただいている倉橋さんへ「こんなパッケージをつくってくれと。」とメッセージを添えてメールで送っていました。

 散策もほどほどに、ガイドさんと待ち合わせの時間なので、ホテルに戻るります。ホテルではガイドのジョゼさんが待ってくれていました。荷物をまとめてチェックアウト。また2日後にはここへ戻ってくる予定なので荷物をホテルに置いていてもいいのですが、あんまり呑気な旅ではなさそうなので、結局全部荷物は持って行くことにしました。 車に乗り込み少し市内観光です。昨日空港についた時には暗くてわからなかったこの国の事情が見えてきます。この国には信号がありません。バス停もあるのかないのかよくわかりません。バスというものがないような気がします。乗り合いの車でとにかく車は乗れるだけ人が乗るシステムのようです。なにせ、車はどこでも止まって、どこでも人が乗り降りしています。危険なのかも知れませんが、どこででも乗れて、どこででも降りれるシステムは僕は大好きです。危険に対する考え方は日本とマダガスカルとでは大きく異なります。一般的に先進国ほど日常から危険が排除されているのですが、時としてそれは人間を怠惰にさせるのかもしれません。

乗り合いの車

 話は戻って、まず最初に向かったのはマダガスカル首相官邸近くにある高級ホテルです。そのホテルの中にはショコラとケーキの専門店があります。もともとフランス領だったこともあり、ケーキはフランス菓子そのものでした。お店を一通り見て、その後、2階にあるカフェに行ってみました。そこにはあまり興味を引かれるようなものは無かったと思います。むしろ、ホテルの外が刺激的すぎて、外国人向けのホテルにはあまり興味を持てないというのが本音です。ジョセさんに「もっと町が見たい」とお願いしました。
「では移動しましょうか」ということになり、ホテルから出ようとしましたが、ホテルのトイレがきれいなので、トイレに行ってから出発しようということになり、最初にコヤマシェフがトイレに入りました。
カフェの中のトイレなので一人づつしか入れないので、石丸さんも私も外で待ちます。が、しばらくしてもコヤマシェフはトイレ出て来ません。もうすぐ出てくるだろう、と、トイレの前で待っていると、
「オーイ、助けてくれー」と叫び声と共に扉を叩いている音が聞こえてきました。
何事かと駆け寄ったら、急にコヤマシェフがびっくりした表情で飛び出して来ました。
「おい、閉めた鍵が開かなくなってな。閉じ込められたわ。びっくりしたわ。」
と。シェフの必死な形相がかなりツボにはまり、大笑いしていました。まあ、そんな大げさなリアクションをしなくても(笑)。確かにこの国は立て付けが悪い扉が多い。というのも、この国の建具は木製でかなりおおらかな作りをしていて、時には締まりすぎて開きにくかったり、逆にゆるく締りがなかったり。

 次は私がトイレに行きます。確かに、立て付けの悪そうな扉です。鍵が固くて閉めにくい。しかし、まあ、自慢じゃないですが、立て付けの悪いのには慣れています。今私が住んでいる家も少し家が傾いているので、開きにくい扉には慣れており、大概のものでも開ける自信があります。用を済まし、トイレから出ようとするが、扉が開かない。押しても引いても、頑として扉が動きません。「さすが、マダガスカル」、と思いながらもう一度チャレンジするが全く持って扉が動く気配がありません。「さっきコヤマシェフを馬鹿にした罰かもしれない、これはマジでやばい。」と思った瞬間、外から笑い声が聞こえてきました。 「なんで?」と思いながら扉を引くと、扉は簡単に開くではありませんか? 「まっちゃん、扉開かんかったやろ。なんでか教えたろうか?俺一人閉じ込められてたらなんか嫌やから、一応お前も閉じ込めてみたんや。」びっくりするようなガキ大将な理由を説明されました。その時の写真がこれです。

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言っておきますが、このシェフの行動はマダガスカルの旅行中のテンションの高いノリがあったからこその行動ではありません。コヤマシェフはいつもこんな感じです。マダガスカルの旅行に行く1ヶ月前にも、コヤマシェフから突然電話があり、
「お前はもうマラリアの注射すましたやろ。」と確認めいた電話があったのですが、マラリア予防の注射をするように説明を聞いたことはありませんし、全く寝耳に水の話でしたが、「え、お前マラリア予防してないんか?今からやったら遅いで。どうすんねん。」と早口で無言の私を畳み掛けてきたのですが、無論、この話はただ私を驚かせるための作り話です。また、こんなのもありました。 「お前、マダガスカルの出発1日早くなったの聞いたか?」
とマダガスカル出発2日前の打ち合わせの後、ものすごい神妙な面持ちで話をしています。「え、まじっすか?」と頭が真っ白になっていると、 「嘘、嘘、ごめん。ちょっとビビらしたろうと思ったんやけど、俺は人がいいから嘘が突き切れんわ?。」と笑いながらドラエモンのジャイアンみたいなことを言っていましたが、これもまたコヤマシェフです。

 話は戻って、ホテルを出てアンタナナリボの町が見渡せる高台に案内してくれるそうです。ホテルの前で車を待っていると、旅行客相手の物売りの人たちが次から次へとやってきては、アンモナイトや楽器や虫の標本などを売りつけにきます。また、それに混じって子供の物乞いも群れてきます。このホテルは首相官邸の目と鼻の先ですが、小さい子供の物乞いをする姿をこの国の大統領は毎日ではないにしろ、頻繁に目にしているでしょうが、大統領はこの子供達のことをどう思うのだろう。逆にこの子供たちはそんな国の代表を見て日々何を感じているのでしょうか。なんとも救われない思いがしました。

 ジョセさんの案内で首都アンタナナリボが見渡せる高台へと連れて行ってくれました。高台からみる景色は絶景で「アフリカに来たぞ。」っと感じさせてくれます。町は丘を巣食うように所狭しと建物が並び、細い路地が入り組んでいます。遠くには田園風景やその向こうにはサバンナのようなドライな景色が順広がっています。

アンタナナリボの町

「あの向こうまで行ってみたいなあ?」と景色を見ながらコヤマシェフは遠くを指しています。確かに、これからの旅で予定はいっぱいいっぱいに詰まって自由はきませんが、つい、そんな衝動にかられる景色です。景色を眺めながら、近くのお店も散策しました。生魚が売ってあったり、軍鶏が歩いていたり、いろんな生肉がぶら下がっていました。

その中で焼き菓子のようなものを売っているお店を発見し、早速コヤマシェフがその何種類か購入してきました。
「おう、ちょっと味見してみよう。」と一ついただきましたが、どうやらあんまり食べてはいけない危険な味がします。

 「ジョセさん、これなんですか?」
「ムフカシと言います。ムフはマダガスカル人という意味でカシはパン。つまり「マダガスカル人のパン」という意味の食べ物だそうです。
「ジョセさんこれ食べても大丈夫?」と聞くと
「少しなら。」とジョセさん。
早く教えてよ。それが原因かどうかはわかりませんが、その日から何となくお腹の調子が悪くなりました。この旅行中ずっとお腹の調子が良くなかったのですが、思い当たる原因が多すぎて、何が真の原因かは未だによくわかりませんでした。

ひとときの観光を終え、次はマダガスカルで一番有名なチョコレートショップ「Robert」へ。「Robert」はマダガスカル産のカカオを使っており、ボンボンを中心にいろいろなチョコをそろえていました。しかし、カカオの産地とはいえ、チョコレートのお店が頻繁にある訳ではありません。やはり、チョコレートは嗜好品。なかなか庶民が口にするようなものではないようです。

 さて、お店の見学も終えて、ランチに向かいます。その途中に、骨董屋さんに寄ることにしました。今回は観光客相手の民芸品はあまり必要ありませんが、昔から使われている古道具や古い建材などはどうしても見てみたいとガイドのジョセさんにお願いしていました。もしかしたら今回のショコラのお店の参考になるようなものがあるかもしれません。そんな訳で骨董品のお店に案内していただきました。するとびっくり、あります、あります、ものによっては200年前のものもあります。或部族のお墓に飾られていた木のオブジェとかも置いていましたが、なんでも売っている商魂に感心しました。

「これどうや?新しいお店に飾ってたら面白くないか?」と古い真っ黒のマスクを眺めています。確かに。本物の凄い迫力。
しばらくお面を見ながら思案していたかと思うと、
「これもって帰えろうか。何かに使えると思う。」とコヤマシェフ。
今回のお店の中のどこかでそれがディスプレーされています。お店にこられた際は是非ともこのマダガスカルのマスクを見つけてみてください。

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更新日12.10.16


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