16.11.01 (2/3ページ)
Vol.2

Human ~coexist with nature~
人、それは自然とともに。

Theme01 発酵

日々の生活の中で最も多く出会うアイデアの一つは、料理人たちから教えられる、まだ見ぬ食材から得ることができる。今年は日本で、カカオの産地ペルーで、たくさんの発酵食品に巡り合うことができた。何年も寝かされたビンテージの酒粕、味噌、醤油。ペルーのキャッサバから作られる発酵酒や、発酵させた蒸しバナナ。発酵食品というカテゴリーもまた、先人たちの技術と伝統のうえに、その土地や国で受け継がれているものだ。もちろん、すぐに利用できる食材もあるが、ベストなマリアージュが見つからない場合や、活用の方法がわからない場合は、そのままソースとして次回まで寝かせておく。実際にそうやって寝かせることで、何年か後に復活して見事な作品となるものもたくさんある。

Theme02 自然のちから

私にいつもインシピレーションを与えてくれるもう一つのものは、自然だ。今年はコレクションのサブタイトルにもある”coexist with nature”というフレーズにもあるように、いろいろな意味で自然に心を奪われることが多かった。丹波・立杭の里で出会った苔むす美しい自然の庭。大自然が育んだ土から生まれる、陶芸作品の奥深く、力強い魅力。

そして、天然の酵母によって育まれる発酵食品の不思議。その一方で、自然の破壊的なまでに強大なパワーを見せつけられたのは、今年の春に起こった熊本地震や阿蘇の噴火だろう。それらを通して感じるのは、私たち人間が大いなる自然の中で“生かされて”いるという奇跡だ。
今回のボンボンショコラのデザインにも、自然へのリスペクトの気持ちが生かされている。ぽたりと落とした醤油が垂れて流れゆく様子、エアブラシの風圧で表面にできた風紋のような窪み…色や柄といった人為的かつ機械的なデザインではなく、陶芸のように、あくまでも人の手や自然の力でないと表現できない、繊細かつナチュラルなタッチのデザインを多く採用した。表現にはショコラティエの技術を必要とするが、100個あったらそれぞれ少しずつ違っていてもいい。それがナチュラルということだから。もともと、シングルオリジンのカカオや、コーヒーは、自然の気候風土に育まれた年ごとの作柄を個性として捉え、その違いを楽しむというコンセプトで生まれたもの。今年はあえて自然に身を委ね、肩の力を抜いた“ヒューマンタッチ”のクリエイションをお見せしたいと思っている。

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