あのとき、あの人が……先人の思いを受け継ぎ次代へ繋ぐ
2020年は「伝わる年」ショコラで僕が伝えたいこと
コロナ禍で自粛している時、今年は「伝わる年」だと思った。
今、真剣に皆が“生きること”について考えていると思うからだ。 正直な話、いつもなら難しい話を長文で伝えても、興味の無い人は全く読まないだろう。一方で、読んで下さる方がたくさんおられるのも知っている。 他のケーキ屋さんで毎年こういう話を発信している人はいないのではないだろうか。
僕は単純に「伝えたいこと」があるからSNSやカタログの文章などで発信している。 レシピ配信も、ただ動画とレシピを載せるだけではなく、冒頭に伝えたいことを必ず書いた。例えば、牛乳の話。「世の中で牛乳が余っているので、牛乳を使ったレシピを配信します」だけではない。 生産者の方が困っている状況は僕も心が痛んだし、「いつもお世話になっている分少しでも恩返しをしたい、休業している今、自分にできることがこのレシピ配信であり、皆さんにたくさん使っていただければありがたいです」ということまで書いた。
そこまで書けば、読まれている方も「なんとなく」ではなく「協力しよう」という気持ちになってくださると思ったからだ。そんなことを続けていたら、インスタのフォロワー数が3万人増えた。 すると、レシピの投稿だけでなくインタビュー記事やエスコヤマが発信する情報にも見てくださる方が増えた。 そういう流れがあったから、「今だったら難しい話でも伝わる」と思ったのだ。
コロナウイルスが広まり始めた3月上旬あたりから徐々に人が集まるところへ行くのは控えようという風潮が広まり、人の往来は激減。 多くの飲食店で「作っても売れない」という状況が発生していた。 このときにある方から連絡が入った。
連絡主は音楽プロデューサーの小林武史氏だ。 小林氏が代表を務めるKURKKUFIELDS(クルックフィールズ)も自粛による大きな影響を受けていた。 買い手のない卵がたくさん余っているというのだ。 そこで僕は二つ返事で「バウムクーヘンに使います」と言って買わせていただいた。 その時に生まれたのが「つながりのホワイトバウム」である。 そして、そのバウムには小林氏からのメッセージを添えていただくことになった。
― 小林武史氏のメッセージ ー
KURKKU FIELDSを含むKURKKUとはap bankの理念を実践する場として2005年に立ち上がったのですが、同じ年に生まれたのがap bankのコンセプトソングで「toU」という楽曲です。 東北の震災の時も、この楽曲は様々な形で役割を果たしていって、新しく現代アートや食と音楽のイベントRAFを生む手助けもしました。
toUと共に、震災後の動きを見ていくと、僕らが感じたことはネガとポジは繋がっているということでした。 あれだけ大きなネガティブがあったこと、それは本当に大変なんだけれど、だからこそ出会いや化学反応が生まれて、新たなポジティブが生まれる。いま新型コロナウイルスの大変な時期ではありますが、またtoUが役割を果たしていきます(もうじきなにがしかの発表があります)改めて『to U』の“U”の字を見ると、何かと繋がってたり何かを下支えしたりしてるような文字に見えたりもします。
また“U”の字から連想する“Universe”や“Unite”の言葉の意味からも孤立したりバラバラになってるようにみえる現在でも<利他を思う気持ちと利己は繋がっている>というようにも思えます。前置きが長くなってしまいましたが、僕らが手を差し伸べるではなく、このような形で小山さんに手を差し伸べてもらって、そしてそこからまた新しい化学反応が起こり、クリエイティブが生まれ、今回のこのバウムクーヘンが出来上がりました。