19.12.25 (1/4ページ)
Vol.13

ボンボンショコラ 幸せのパンデミック作戦 2020

ボンボンショコラ
その小さな一粒の中の宇宙

ボンボンショコラと聞いて、みなさんはまず何をイメージされるだろうか? お酒の入った大人だけが食べられる、いわゆる「ウィスキーボンボン」や、バレンタインデーだけに登場する高級チョコ、といった印象だろうか。


この5年間にBean to Bar、シングル・オリジン・カカオなどの言葉が世の中に広く浸透し、巷には多種多様のタブレットショコラ、いわゆる板チョコが溢れている。 百貨店などのメジャーな売り場においても今はタブレットショコラが主役のようにも見える。それによってボンボンショコラの影が薄れているとか、そういう話ではなくむしろ、世界中の創り手の方々の取り組みのおかげでタブレットショコラは進化し、様々なカカオのプロフィールや生産にまつわる農園の方々のこともより詳しく知ることができるようになった。


そして、ボンボンショコラの創作にも使わせていただく新しいカカオも増えているのは非常にうれしいことである。 しかしその一方でボンボンショコラについては、まだまだ認知されていない、という点が浮き彫りになってきたと感じる。そんな今こそ、私たちショコラティエからきちんとした情報や商品を提供し、本来のボンボンショコラの楽しみ方をプレゼンテーションしたい、そんな想いに強く駆られている。

そんな流れもあって、私の2020年のテーマは、ずばり『ボンボンショコラ〜幸せのパンデミック作戦〜』だ。 ボンボンショコラは1粒の大きさから見ると割高に感じられるかもしれないが、あの小さな1粒の中には、創り手のプロフィールや世界観、センス、経験、技術などのすべてが凝縮されている。 世界各地から集められた素材やカカオ、制作に要する手間や時間はもちろん、味わった時の楽しさや世界観の広がり、感動のコストパフォーマンスは圧倒的に高い。


また、私はボンボンショコラを一皿の料理だと捉えている。お口の中で多彩な味や香り、食感が追いかけるように広がってハーモニーを奏でる様は、まさに“オーラル・エンターテインメント”の真骨頂といってもいいだろう。


そんなボンボンショコラの魅力をどう伝えれば、広く市民権を獲得できるようになるのか?私なりに考えた一つの手法が、テーマをビジュアル化してボンボンショコラの楽しさを表現することだった。そのためにまず、今まで創り上げたボンボンショコラの中からセレクトしたアイテムを詰め込んだアソートボックス『MONSTER CACAO』シリーズを、『The Story of CHOCOLATE MANIA』シリーズとして生まれ変わらせることを考えた。名前の通り、コンセプトはあるストーリーから生まれている―――「チョコレート仮面」なる謎の人物が、世界中をボンボンショコラの甘い魅力で虜にし、そのハッピー・オーラで「幸せのパンデミック」を巻き起こそうと企んでいる…というものだ。

皆さん、思い出してほしい。前回の『MONSTER CACAO』のパッケージに描かれた3体の個性豊かなモンスターを。


No.1は世界中から素材を見つけてくる探索能力。No.2は、集まった素材から組み合わせなどを閃く能力。No.3は出来上がったショコラを世界中に発信するプレゼンテーション能力。それぞれが異なる能力を持ち、3体が力を合わせて世界中から集めたカカオや食材でチョコレートを創り上げていく、というコンセプトをベースにしたデザインだった。世の中で何かを創造する時のプロセスやその感動はボンボンショコラづくりとも共通しているため、それを伝えたいという思いを込めての発信だった。


しかしそういったことも、まずはボンボンショコラを召し上がっていただかなければ伝わらない。彼らが生み出したボンボンショコラをどうやったら召し上がっていただけるのかを考え、計画し、ディレクションする人物、つまり「チョコレート仮面」が登場する必要があったのだ。実際により多くの方々に召し上がっていただき、体験を通してその楽しさを知っていただきたいということで、アーティストのマックス・ワイントラウブさんにお願いしてパッケージだけではなく、アニメーションも製作していただきYouTubeにもアップした。アニメーションのBGMは、ジャパニーズ・プログレッシヴ・ロックの先駆け的存在であるNOVELA/Scheherazadeのギター・平山照継さんにオリジナルで書き下ろしていただいた。子どもから大人までが楽しめる上質なアニメーションに仕上がったと思うので、みなさんにもぜひご覧いただきたい。アニメーションを見た後に無性にボンボンショコラが食べたくなったら……私の『ボンボンショコラ〜幸せのパンデミック作戦〜』は成功ということになるだろうか。


TOP