19.12.25 (2/4ページ)
Vol.13

ボンボンショコラ 幸せのパンデミック作戦 2020

サロン・デュ・ショコラ・パリ
25年目にできた空白の時の中で

2019年のサロン・デュ・ショコラ・パリは、開催25周年のアニバーサリー・イヤーということもあり、いつものコンクールが休止になった。例年ならバレンタインが終わると、5~6月に審査があるC.C.C.のコンクールに向けた提出作品の準備が始まり、春先までは非常に濃密で多忙な時間を過ごしているのだが、今年はコンクールがなかったため、思うがまま実験に没頭する時間がたっぷり取れ、収穫の多い年となった。


長い創作期間であったが、私がこの1年間で出会った新しい食材とカカオのマリアージュで、「お客様の“知らない味”を届けたい。そして、この素材知っていると思ったらその味は想像を超えていた……そんな感動をつくりだしたい」こんなふうにずっとワクワクしたテンションのまま実験を重ねてきたので、飽きずに創作を続けることができた。そのおかげで30種類を越える個性派揃いの力作が出来上がった。


そこからテーマと流れ重視で『SUSUMU KOYAMA’S CHOCOLOGY 2019』の4種類を選び抜くのだが、「テーマが違っていたら、CHOCOLOGYに入っていただろう」という力強い作品は、ある程度絞られてすぐに8種類が出揃った。それが『UNDERGROUND CHOCOLATE AWARD 2019-2020』。

これには、新しいカカオとの出会い、料理から発想が生まれたものなど、前年を超えるマリアージュが表現できた作品が満載である。控えめに言っても結構面白い仕上がりの作品が集まっているので、ぜひ注目していただきたい。特に料理人さんなど、食のプロフェッショナルや、エスコヤマのショコラを毎年楽しみにしてくださっているコアなファンの方々にこそオススメしたい。


そうして長い創作を終えた後に待っていたのは、インターナショナル・ココア・アワードの審査。2年に一度、サロン・デュ・ショコラの舞台に各国の生産者が集い、優秀なカカオ豆と評価を受けた生産者の方々が表彰を受ける、というコンクールだ。審査員として参加するのも今年で4回目。世界中から集まった50種類のクーベルチュールを試食してはポレンタで舌の上の油分をリセットし……を繰り返し、評価をつけてゆく作業はかなりの集中力を有する重労働だが、カカオに対する理解も深まり、味覚の部分でも得るものは大きい。


審査の中で気づいたのは、前回まで必ず一つや二つは存在していた「え?!何やこれ!?」とネガティブな味を感じるものが、今回は無かったということ。生産者の方々のレベルが上がってきている、とも考えられるが、この点に関してはハッキリとは言い切れない。何せ、55の国から集められた221のサンプルのうちの50である。残り171のサンプルを知ることはないし、出品すらしていない生産者さんが世界中に無数に存在すると思うからだ。現地で実際に自分が審査して高い評価を付けたものは、総合的にどんな評価を受けているのかを照らし合わせもしたが、結構当たっていた。そして、審査員によって“好み”や評価する点が異なることもはっきりと分かった。


大きな違いは、“渋み”の捉え方。私にとってネガティブと感じる渋みを、ポジティブと捉えている方が多いようである。これはまた再来年に審査員として参加できるのであれば、ぜひ改めて検証してみたいと思う。


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