21.12.28 (1/4ページ)
Vol.18

魂のバトン

はじめに

2021年はコロナ禍のなか幕を開け、相変わらずマスク着用生活が1年間続き、そんな状況は変わらぬまま、2022年を迎えようとしている。そんな状況下でも、2021年のショコラ創作は、「充実していた」と言える。「SUSUMU KOYAMA’S CHOCOLOGY 2021」「UNDERGROUND CHOCOLATE AWARD 2021-2022」「Official Tea Fukaborism 2022」といった毎年新作を発表しているボンボンショコラ18種類はしっかりと生み出すことが出来たし、このカタログには登場しない、百貨店様向けのセレクションボックスのために創った新作も創り上げることが出来た。もちろん、試作はしたがきちんと完成まではさせることがなかったショコラも存在する。


また、es-TABLETについては百貨店限定の1枚を加えれば全部で9種類。そのほか、「es-シリーズ」は2種類の新作が登場し、「生チョコ『モンブラン』」「FRAISE fraise(フレーズ フレーズ)」「POM.POMME(ポム・ポム)」「苺のヘッコンダ」など、たくさんの完全新作アイテムも誕生させた。ということで、今回のチョコレートブックは大ボリュームの内容となっている。ページ数も過去最高だ。だから、お客様もどの商品を試してみようか、と迷われることも多いだろう。ご自身の好みや、プレゼントとして渡される相手の方の好み、届けたい想いなど、いろいろなことをたくさん考えていただきながら、楽しく選んでいただければうれしく思う。

SUSUMU KOYAMA’S CHOCOLOGY 2021

前述の通り、書ききれないほどたくさんの新作が生まれたわけだが、その背景にはまず「SUSUMU KOYAMA’S CHOCOLOGY 2021」のテーマにもなった「魂のバトン」を渡して下さった生産者の方、お茶のプロフェッショナル、スペシャルティコーヒー専門の焙煎士、料理人、という4人の方をはじめとする素材の提供者の存在がある。これまでにもあらゆる作品を通して、素材を提供してくださる方々の思いや、それを受け取る人間として、どんなモノづくりをしていかなければいけないか、ということは語ってきた。


しかし、今回のCHOCOLOGYの4種類のショコラの名前のように、素材を提供してくださった方の名前を前面に出したことは無かった。 宣伝だとか、そういったことではなく、ただ純粋に「僕はこの方々からバトンを受け取ってショコラを創作しました。彼らの生み出す素材が無ければこのショコラは創れなかったんです」ということを伝えたかったし、コロナ禍というあらゆることが制限された状況の中で、より素材と向き合う時間が長かった分思い入れが強くなっていた、ということもあったかもしれない。


特に、焙煎士のカフェファソン 岡内氏の存在はとても大きかった。付き合いは5、6年になるが、毎年新作ショコラ創作の何かお役に立てれば、ということで十数種類のコーヒー豆と氷出しコーヒーを送ってくださっており、いつもそれがショコラ創作スタートの合図になっていた。そして今年は岡内氏自身もコーヒー産地に行けない中で、僕と同じ状況でありながらどうにか協力が出来ないかと、氷出しコーヒーに工夫を加えて今まで以上に濃く味が出るようにしてくださったり、コーヒー豆も同じ産地でありながら焙煎温度を細かく分けてその豆のポテンシャルがカカオと交わったときにしっかりと発揮できるように考えてくださったりと、まさしく同じ気持ちでショコラ創作をしてくださっていた。


料理人の坂本シェフもそうだ。彼の料理の中に使われていた「香茸麹」も新しく仕込んでくれて、「最後の判断は実際に使用する小山さんが使うタイミングを決めてください」と委ねてくれた。さらに、天然香茸の生産者さんを紹介してくださり、自家製の乾燥香茸を作れるようにもしてくれた。


毎年のように訪れていたカカオ産地も行けなくなり、2年が経った。正直な気持ちを申し上げればインプットのうえではやはりどこか心もとないというか、物足りない感じは確かにある。カカオのルーツやカカオが生活に浸透している文化圏の空気を肌で感じる体験はそうそうできるものではないし、無心にインプットできる状況は必要だと思うが、それがなくともたくさんの新作ショコラを生み出すことが出来ているのは、周りに「魂のバトン」を渡してくださる方がたくさんいてくださっているからだと思う。


そして、その素材を使って何十種類もあるクーベルチュールの中から最適な組み合わせを見つけ、方向性を決めるところから、一層一層の細かい高さを決めるところまでトコトン突き詰めて創り上げてくれているエスコヤマのショコラティエ中川君の存在も欠かせない。皆さんには心からお礼を申し上げたい。

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