21.12.28 (3/4ページ)
Vol.18

魂のバトン

今回、「UNDERGROUND~」のなかでその典型的なパターンだったのが、「微酸金萱+アーモンドミルク」だ。元となっている「金萱茶」は、その甘味が特長で味わいを「ミルクの甘味」と表現されることが多い。そうとは知らず、繰り返し試食をする中で「何か味に締まりがない。動物性ではなく、植物性のミルクのニュアンスを感じるのでアーモンドミルクの要素を足そう」と判断して実際に足したら味が締まり、非常に出来の良いショコラが完成したのだが、半年ぐらい経って商品コピーを作るときに聞かされたのが、「このお茶は、その味わいをミルクに例えられることがあります」という話だった。


試作の段階で先にそれを聞いていれば迷うことなくそのペアリングで新しいショコラが創作できたのでは?と思われるかもしれないが、ひと口に「ミルク」といってもアーモンドミルクが思い浮かんでいたかは分からないし、「正解はこれです」と決められていてもそこに辿り着ける補償は無いので余計に時間がかかって迷いに迷って結局完成しなかった、ということになっていたかもしれない。

新素材を使いこなすこと

ボンボンショコラの創作においても、そして今回初登場の新作のチョコレート菓子たちの創作においても、新素材の存在は大きかった。冬ギフトカタログにも掲載し、先駆けて紹介していた新素材「ホールフルーツチョコレート」は世間一般にも「SDGs」というキーワードを絡めて説明すれば分かりやすい新素材だが、創り手として、扱う側の立場で見ると初めは戸惑う素材であった。扱いが難しい面があるのだ。しかし、幾度も試作を重ねてバレンタインのシーズンには「ザッハトルテ」として皆さんにお届けすることになる。また、「esシリーズ」の「プラリネサンド-es 金胡麻」という形でも表現することが出来た。


それ以外にも、以前からも世間に登場していたがフルーツクーベルチュールという、フルーツとショコラが融合した素材や、マロンとショコラを融合させ、マロンの味をストレートに表現することが出来るようになったチョコレートなど、近年「前からこれを求めていたんです」と言いたくなるような素材の開発が進んでおり、チョコレートで表現できる味の可能性はものすごく広がっている。皆さんにそれを感じていただくことが出来るとすれば、冒頭に述べた新作アイテムの数がそれだ。


「生チョコモンブラン」もその一つ。「栗の生チョコ」と言うよりは、前からずっとモンブランの姿がデザインになっているパッケージがぴたりと似合うような生チョコを創りたいと思っていたものを、やっと表現することが出来た。


「苺のヘッコンダ」に関しては、テリーヌ・ドゥ・ショコラ・ヘッコンダの進化バージョンとして「カカオと苺」のマリアージュをテーマにした、ボンボンのようでもありプチガトーのようでもある味わいの表現が出来た。技術的には難しい部分もあったが、試作を重ね、もっともっとポップで、誰が食べても美味しいと感じていただけるヘッコンダを創ろうと思って生み出したものである。実際、ヘッコンダを食べたことが無い、という方にはぜひ召し上がっていただきたいアイテムであり、今までのヘッコンダを召し上がられたことのある方にも新しい味わいとしてぜひ召し上がっていただきたいと思う。

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