19.12.25 (3/4ページ)
Vol.13

ボンボンショコラ 幸せのパンデミック作戦 2020

太陽と光合成と発酵と。
大自然が育む「茶」の魅力

素材単体で見てみると、今年私がもっとも力を注いだのは「お茶」だ。きっかけは、今年の夏にエスコヤマのテラスで販売していた「タピオカドリンク」の創作過程で「お茶本来のポテンシャルの引き出し方」を学んだこと。


茶葉にお湯を注いで蒸らしが終われば最後の一滴まで茶葉からギュッギュッとお茶を絞り出す。すると茶葉の苦み・エグみまで引き出されてしまうが、そこへある程度の砂糖を加えると、お茶の香りと味がパッと花開く瞬間に出会う。砂糖の甘味によって苦味・エグみは中和され、お茶本来の味だけがしっかりと感じられるようになるのだ。


改めて考えれば、これはチョコレートの考え方と同じである。例えば、カカオ分70%のビターチョコレートは、残りの30%が砂糖。63%や67%などもあり、それぞれ37%、33%の砂糖を入れなければ、そのカカオのポテンシャルが発揮できなかったということを証明してくれていたのだ。過去の経験と、素材との出会いによる新しい発見が繋がり創作意欲を倍増させたのである。


そもそも「お茶」とは、何らかの木や植物を栽培してその葉や実を摘み、乾燥させてまた水で戻して飲む〜というスタイルの飲み物を総称していう。ではなぜお茶が世界中で飲まれているのか?と考えたとき、海外のとある場所を訪問した際にその答えを得た。プロセスは割愛するが、要はお茶とは、太陽のエネルギーを人間が体内に取り込むための一番手っ取り早く効率的な手段だったのである。



意外に思われるかもしれないが、私にとって“澄んだ”お茶の香りと味わいを表現するのは初めての挑戦だった。


エスコヤマでお茶を使ったボンボンショコラと言えば「抹茶」や「ほうじ茶」。これらは世間でもミルクと合わせた「ラテ」としてもはや定番化している。ボンボンショコラのガナッシュには必ず生クリームを使うので、ミルクと相性がいいのは自明のこと。しかし、ストレートティーで味わうことが一般的な紅茶は、そもそも合わせるチョコレート自体も不透明であり、ましてや生クリームと合わせれば味自体が曇ってしまう可能性が高い。ハードルが非常に高く、正直に言って避けていた。


だが今年、今しか手に入らないという貴重なダージリンを紹介していただいて事情が変わった。クリアな味をショコラで表現したいという欲求が生まれ、例年のような時間の制約がなかったことと、何より素晴らしい個性を持った2種類のクーベルチュールとの出会いという好条件が重なり、今年はお茶の透明感をショコラで表現しようというモチベーションになったのである。


2種類のうちの一つは、インドのアナマライビレッジで生産されたカカオから生まれたショコラ・ノワール70%。産地はダージリンと同じインドである。テロワール繋がりというのも偶然か必然か……。こちらはレモンのような酸味とタンニンの効いた渋みが特長で、特に渋みがダージリンとリンクする。そしてもう一つは、エスコヤマのボンボンショコラに使われているクーベルチュールの代名詞と言えるほどポピュラーなペルー・チャンチャマイヨ産のカカオから生まれたクーベルチュール。しかし、今回は初登場のホワイトチョコである。このホワイトチョコ、醗酵過程を経たカカオから抽出されたカカオバターと乳を合わせている。だから、カカオの果肉の良いところをしっかりと吸収していて、チャンチャマイヨらしいフローラルな香りが広がる、ホワイトチョコとは思えない驚くべき味わいである。



実はこのホワイトチョコ、2018年のサロン・デュ・ショコラでクーベルチュリエのモラン氏が「チャンチャマイヨのココアを作った」と紹介してくれた時に閃いた「ココアがあるならカカオバターがあるはず。それでホワイトチョコを創ってみてくれないか?」というリクエストから生まれたものである。そこから新たな作品が生まれたのは感慨深い。


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