20.12.25 (4/6ページ)
Vol.15

あのとき、あの人が…… 先人の思いを受け継ぎ次代へ繋ぐ

その時何が石丸氏を動かしたのかというと「生きていけないかもしれないという危機感」でしかないと思う。 自分が動けず収入が入ってこないとなったら、その事実は重い。 それぞれが生きるということを考えながら取り組んだクリエイションだったと言える。


ただ、いくら時間があったとしても正しく伝えるためにはビジュアルだけでなく、味でも、言葉でも伝えなければならない。味が伝わる言葉も選ばなければならない。 今回動画でセミナーをやろうと思ったのも、少しでも伝える手段を増やしておきたいという考えもあるが、僕のセミナーを聞きながら食べたことがない人が「説明を聞きながらだったらすごくよくわかった」と感じてほしいから。 ご自宅でチョコレートと向き合う時間を去年よりバージョンアップさせて、もっとショコラ好きを増やしたい。


CHOCOLOGY 2020には、石丸氏が作ってくれた動画と自社で作った動画という2つのコンセプトムービーがある。 石丸氏にコンセプトを説明する際、僕が当初言っていたのは「それぞれに虫が関係してそうなった」「花が咲いてそこに虫が集まり受粉の手助けをする」ということ。 当時はキーワードが「花」と「虫」だったので出来上がったイメージ写真にはそれが色濃く反映されていた。


僕は初めて写真を見た時、「自分の個展に出す分にはいいけど、僕のPRにはどうだろう」と言って一度はダメ出しをした。しかし、彼はもう一度同じ写真で、今度は写真・文章・BGMを付けて動画でプレゼンをした。 それを観た僕は「これだったら通じる。 ええやん!」と写真も動画も即OKした。 それを経て、テーマの壮大さを反映し、一粒ひと粒のチョコレートを説明していくスタイルのコンセプトムービーも作った。

今回、CHOCOLOGY 2020は2つのコンセプトムービーとセミナームービーと全部で3つのムービーを用意している。 コロナ禍だからこそ出来たことだ。


失くしてはいけない 大切なもの みんなの「幸せのボタン」

今回、「幸せのボタン」の味とパッケージを一新した。 幸せのボタンを更新するのは3度目だ。 一つのきっかけは、やはり素晴らしい素材を紹介してくれる深掘りストがいたからである。 また、僕にとってこのアイテムはショコラのスタート地点。 惰性に流されて昔の思いが劣化することがすごく嫌なのだ。 だからデザインも、今回新しい絵本も描いてくれている松並良仁さんに、ダニエル君との繋がりを表現してもらいたいなと思って描き下ろしていただいた。


アイテム自体が劣化していてしまうと伝えたい思いが伝わらない。 手に取ってすらいただけない。 お客様に正しく伝わるように進化させて残していきたいと思っている。


もう一つ、リニューアルして継続する大きな理由がある。 パッケージに付いているあのボタンだ。 このアイテムを始めたとき、僕が「エクアドルのカカオを使っています」と言ったら「エクアドルのタグワヤシの実が高級服のボタンに使われているのを知っていますか」とおっしゃったボタン屋さんの社長さんがいた。 今もその方から本物のボタンを仕入れさせていただいてパッケージに使用しているのだが、今回その方が引退するというので、ご挨拶に来られた。


その時に同行しておられたのが、競合他社の社長さんだった。 ライバルに頭を下げて「この形のボタンを作ってあげてもらえないか」と頼んで下さったそうだ。 これは凄い話。 何より凄いのはボタン愛である。


当初「最初はプラスチックでやって、いずれは本物を使いたい」と思っていたが、社長さんのおかげで本物を使うことができた。 エスコヤマ内の物はいずれ全部“本物”にしたいと考えているが、それはまだ途上だ。 僕の周りやお客様の中にも「こういうところはしっかりしているのに、小山さんここはどうなん?」と、ご指摘をいただくこともある。



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