19.10.15 (3/3ページ)
Vol.12

パティスリー改造計画 ビハインド・ストーリー
小山進 16年目のモノづくりの覚悟

SEASON 04
Into a new era : 新しい時代に向かって

一流クリエーター陣と小山進のケミストリー 予想外かつ規格外の未来へ


次の世代に向けて。これは、私の行動の一つのミッションでもある。これまでも私はエスコヤマの庭に毎年、新しい木を植え、そこに虫たちが集まる空間をつくってきた。そこにはたくさんの可愛い昆虫や妖精、魔女の銅像が隠れていて、お菓子の森の物語の世界観をヴィジュアライズしている。


また、他にもお菓子を食べる時のワクワク感をさらに膨らませてくれるパッケージづくりにも、同じ理由から力と想いを注いできた。まるで本物のジャムがぺっとり着いていると錯覚させるトリッキーな箱、つなげるとビー玉転がしが楽しめそうなhekkondaの箱、頭のてっぺんに置くと宇宙と交信できそうなガトー・ア・ラ・ブロッシュの箱など、子どもたちが手に触れて、気軽に遊び道具にできるアートとしてのクオリティを、私は常にパッケージに求めてきた。パッケージはともすれば資源の無駄遣いと考えられがちだが、子どもたちが最初に手に触れられる身近なアートとしてなら十分、その価値はあるのではないだろうか。もとより、お菓子は箱がなければお客様に届けることができない。ならば、それだけの存在意義をそこに持たせてやればいいと私は考えている。

私がパティスリーの改造計画に際して妥協を許さなかったのは、無論、装飾的な部分だけではない。先ほどもお話ししたように、パティスリーの売り場は他のどの店とも違う、エスコヤマ独自のマーケティング・ルールによって成立している。ちなみに、店内の売り上げNo.1は小山ロールなのだが、何とNo.2は焼き菓子の単品とアソートギフトだ。混み合う店内の隙間をぬって皆様が焼き菓子を買い求めてくださっていることは驚きであり、感謝の気持ちでいっぱいになる。


また小山ぷりん、小山チーズは売り場面積が小さい割には売り上げが好調で、コストパフォーマンス性の高い人気商品だ。今回、改造プロジェクトに参加してくださったクリエーターの皆さんにまず最初にお願いしたのは、この店で16年かけてお客様と一緒につくり上げてきたマーケティング・ゾーンのセオリーを決して崩すことなく、さらにお買い物をしていただきやすい空間にしてほしいということだった。


左官職人の久住有生さん、アイアンアーティストの平山徹さん、空間デザイナーの橋本夕紀夫さん、ライティングデザイナーの佐藤政章さん、庭師の松下くんという「Rozilla」創設時と同じメンバーに加えて新たに加わった陶芸家の市野雅彦さん、木工アーティストの婦木佑太さんら一流のクリエーターの方々の手によってこのパティスリーが完成することで、ようやく次の時代への準備は整った。


ここから先の物語はto be continued... 今後のエスコヤマを、皆様もぜひ楽しみにしておいていただきたい。


パティシエ エス コヤマ
小山 進

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