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Vol.17

美味しい連鎖を生み出すために

進化を求められてこそモノづくり人

新しい素材が生まれるということは、研究開発や技術も進歩していっているからだということになるが、それを扱う僕たちも商品開発のテクニックや理解度を向上させていかなければならない。 それは当たり前である。 いつまでも「これが売れるから」と言って同じものばかりを作っていては成長することができない。


エスコヤマの小山ロールというスペシャリテの配合が、材料の状態やオーブンの設定、室内の温度や湿度などの条件がそろっていなければいいものができない、というぎりぎりの配合になっているのは、常に素材と真剣勝負をしなければいけない、という姿勢を保つため、ということでもある。


大量生産のものは効率重視にしたいけれど、敢えてそれをしないのは自分への挑戦である。 また、ギリギリの配合であることを理解して常に限界にチャレンジし続けなければ真に美味しいものは生まれないと思う。


その姿勢を失ってしまってはモノづくり人失格だ。 「挑戦なくして成長なし」とはよく言ったもので、「技術や味、素材に向き合う姿勢や作業に取り組む真剣な姿勢を失いたくない」という意識が無意識的に表れていると思う。 この思いはいつまでも変わらない。

これは姿勢に関する話だが、素材についても気になれば何を使っているのか、どういう工程で生まれたものなのか、やってみなければわからないことは山ほどあるので試作中にも常に問い合わせる。 質問の切り口さえ間違っていなければ、自分で全部を調べずとも、正しい知識を身に着けることができる。


専門家の皆さんも同じように実験をしてきた結果がその商品なのだ。 あらゆることはすでにデータがそろっていることもある。 なんとなくわかった気で使っているだけでは、決していいものは生まれない。


だからこそ、新しいお菓子と、エスコヤマのスペシャリテである定番アイテムたちを改めて味わっていただき、「スタンダードがこの形なのであれば、新しいお菓子もそうなるよね」という受け取り方をしてくれるととてもうれしい。

新作の見た目は、正直言って派手さはない。 しかし、この文章を読んでいただき味わっていただければ、より「なるほど」と思っていただけるに違いない。


進化が求められる時代の中でも変わらないものを持ち続けることの大切さを改めて感じた創作だったが、技術の向上や素材の発見によって新しいチョコレートを生み出し、いつもこのような機会を与えてくださる世界中のチョコレートメーカーの皆さんには深く感謝の意を表したい。


2021年10月14日 小山 進

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