22.11.07 (4/4ページ)
Vol.20

WELCOME TO NEW POP WORLD


ショコラだけでなく、コンフィチュールでも同じことが言える。 マカロン&コンフィチュール専門店「co.&m.es」のオープン当初から、ゴロゴロと果実の粒を残した苺のコンフィチュールをはじめ、全60種類くらいのアイテムの中から、ペアリングやマリアージュをテーマとしてお客様にお伝えしてきた。 しかし、もっとシンプルで分かりやすくと考えた結果、昔からありそうでなかった新しいタイプのコンフィチュール「シルキーシリーズ」を今年リリースさせた。 果肉をゴロッと残すこれまでのエスコヤマのコンフィチュールとは正反対であるこちらのシリーズは、なめらかでシルキーな口当たりをコンセプトに、果肉は丁寧に裏漉しして、種も一切残さず除去し、きめの細かいピューレに仕立てた。 そして加熱時間も極力短くし、フレッシュな味わいをストレートに表現した。 食べ方は、バターを塗ったパンの上からさらに塗っていただくのもよし、ヨーグルトにかけるもよし、炭酸で割るのもよし、お料理のソースやドレッシングに仕立てるもよし……。 様々な使い方のイメージが湧きやすいコンフィチュールへと仕上がった。 シルキー同士や、果肉を残したコンフィチュールとシルキーシリーズの食べ比べなど「自分はどっちが好きだろう?」と実験感覚でお楽しみいただければ嬉しい。


またマカロンにも、今だから出来る“POPな領域”が存在する。 今までマカロン専門店だからこそ大切にしてきたことがある。 スペイン産アーモンドを、数種類の粗さの違うパウダーにグラインドし、出来るだけ空気に触れる時間を少なくすることだ。 これにより味と香りをベストな状態でマカロンに閉じ込めることができる。 こうした細やかな作業が美味しさを追求していく我々の標準装備なのだ。


またエスコヤマにショコラ専門店があるからこそやらなくてはいけない領域として、ボンボンショコラで表現してきた素材と素材のマリアージュをマカロンでも活かすということも大切にしてきた。 もちろんこれからも続けていくが、今回改めてアイテムを見直し、もっとシンプルに食べたいと思えるマカロンがないかじっくり考えてみた。 今回、ショコラで新しいフルーツチョコレートを開発できたお陰で、今まで表現したかったけど出来なかった素材をマカロンにすることが出来た。この部分にもぜひ期待していただきたい。


エスコヤマのモノづくりのテーマである「上質感のある普通味」。誰もが大好きな味を見えない技術で作りあげる。 エスコヤマのスペシャリテである「小山ロール」、「小山ぷりん」、「小山チーズ」は、見た目はすごくシンプルなお菓子だが、実はかなりマニアックな技法でつくられている。 今まで出会ってきた色んなお菓子のカテゴリーを「自分がやるなら」というオリジナル領域にもっていくため、レシピを化学的に理解し、さらに分解して再構築していく。 お客様にはなるべく難しく感じないように、かなり変わったことを自然体でやり続ける。 これが我々のモノづくりの特徴だ。


この冬デビューさせる新しい仲間にも、その特徴は活かされている。 「MARON CAKE(マロンケーキ)」は、一見どこにでもあるような栗のお菓子だが、スペイン産のマロングラッセとの出会いでどうしても創りたくなった。 アーモンド、蜂蜜、ラム酒…、自然にレシピが頭の中に流れ始めた。 食いしん坊感覚で自然と出来上がったオーセンティックな雰囲気を持つお菓子だ。


「小山チーズ+苺」は、みんなが大好きな苺を小山チーズにプラスするニュアンスで焼き上げた新しい小山チーズ。 苺の味がぼやけないように新しいショコラの技術をしっかり入れ込んで、よりPOPに仕上げた。 お子様から大人まで皆に愛されるテイストに仕上がった。 「小山流バウムクーヘン〜焦がしバター&リッチアーモンド〜」は小山ロールに並ぶ我々のスペシャリテ


「小山流バウムクーヘン」。 “バターを焦がす”という技法は、今まで様々なお菓子で用いてきたが、バウムクーヘンでは試したことがなかった。 しかしマジパンやアーモンドプードルが入るバウムクーヘンにもってこいだと思い、通常のプレーンよりもアーモンドをリッチに使用することで、焦がしバターの香ばしさをより際立たせることができ、ありそうでなかった新しいバウムクーヘンが誕生した。


昨年デビューさせた「ホールフルーツチョコレートケーキ」。 これは、サステナブルな時代が生み出した、世界的な発明から生まれた現代を象徴するお菓子だ。 ホールフルーツチョコレートは、捨てるところなく全てを味わうこと「一物全食」をコンセプトに創られた、カカオがフルーツであることがよくわかるチョコレート。 これをどう扱うか、数年前にそんなミッションを授かり、様々な実験を繰り返してたどり着いた答えは「焼き菓子で表現するのが1番」だということ。 昨年はザッハトルテでもその威力を発揮してくれ、焼成した後のしっとりと生地が戻る感覚と、濃厚でフルーティなカカオの味わいは他には類を見ない不思議な感覚だ。 来年、再度しっかり届けたいと思う。


 長くなったが、子供の頃からはじまった僕の創作は成熟し、よりシンプルなところに着地しようとしている。 エスコヤマの新しい領域である“POP WORLD”をみなさんに楽しんでいただけることを願って。

小山 進

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